犬生の気高さよ

君を忘れない

郷愁の函館旅_day1


春は函館。やうやう桜づく五稜郭すこし離れて、ベイエリアでラッピを食べる。

ということで冬の知床に続き、春の函館に行ってまいりました。
今回函館行きを決めたきっかけはそれこそ1月の知床で現ジャンル:北海道 になったので、原点回帰で春の函館に戻ろう、となったからである。

なぜ故郷でもないのに「春の函館へ戻ろう」なのかというと、わたしが人生で初めて1人で遠出したのは高校一年生の春、行き先は函館であった。
当時Art style of GLAYというミュージアムが彼らの故郷函館にあり、そこが閉館するとのことで、閉まる前に絶対どうしても行きたい!と単身函館まで向かったのであった。
今思えば高一の頃から、本人不在のミュージアムのためだけに1人で函館まで飛ぶような人間だったのだ。
中学生の頃から函館出身バンドのGLAYのファンであることから、函館という街に並々ならぬ思い入れがある。それとは別にしても、現時点で訪れたことのあるどの国の都市よりも、函館という地が一番好きだ。
なので、自分の人生の軌跡を振り返るように「春の函館に戻ろう」となったのである。


5月初旬ならタイミングが合えば五稜郭でお花見なんか出来たりするのでは?と期待を持ちつつ、3月頭のANAのセールで航空券を購入した。
関西から函館に行くには伊丹空港からJALANAに乗るのが恐らく最短ルートである。
今回の旅程は5/6〜5/9までの3泊4日。GW中でもほぼ終わりかけの平日金曜往路、GW明けの月曜復路にしたので、なんと2万円で往復航空券が買えてしまった。
やはり航空券は早く買うに越したことはないのだ。




普段神戸空港関西空港しか利用しないので、伊丹空港はおそらく9年ぶり。
知らない空港の空気を楽しみつつ、朝食に上島珈琲のトーストセットを食す。

空港で搭乗時間を待ちながら食べる朝食は、リゾートで頂くそれとはまた別の独特の高揚感がある。
ギャリギャリに氷が入ったアイスカフェラテとフカフカのトーストを咀嚼しながら、今日から始まる4日間に胸を躍らせる。

天候も良く定刻通りに飛行機は飛び、機内でアップルジュースを飲みながら、不要なメールを削除したりスマホの整理に勤しんでいるとあっという間に函館に着いてしまった。

機内から見える山と海。
ここがどの辺りかはわからないが、見渡す限り山しか見えないという景色の非日常感がいやでも気持ちを盛り上げてくれる。


函館空港に到着し、預け荷物を待っているとまぐろが流れてきた。函館の洗礼を受ける。

空港から函館駅前行き直通バスの出発時間が迫っており、それを逃すと1時間後まで次のバスが来ないので、焦れながらなかなか出てこない己の荷物を待つ。
この時間すらもはや愛おしく感じる。

なんとか3分前にバスに乗り、函館駅前まで向かう。
函館は空港のアクセスが良く、駅前までバスで20分ほどで到着する。その気軽さが函館の好きなところのひとつでもある。

バスの車窓から見える海。来たぜ…函館……!

函館駅に到着。
これだよ……この駅舎だよ………久しぶり……(˚ ˃̣̣̥ω˂̣̣̥ )


函館の地を踏んでいる感動に打ち震えながら、駅前のホテルへ向かう。

今回の旅のホテルはこちら。

フレックスステイイン函館駅
https://www.mystays.com/hotel-flexstay-inn-hakodate-station-hokkaido/
今回の旅は贅沢せずビジネスホテルに。
じゃらんコーポレートサービスのプランと自分のポイント利用で、なんとダブル3泊素泊まりで1万円を切る破格の安さ。
駅前のバスロータリーの真向かいにあるので、アクセスは抜群に良い。

案内された部屋は521号室。

522という番号に執着するたちなので、非常に惜しい。

室内はこんな感じ。

広くはないが狭くはなく、おおむね満足。
建物の新しさに比べると窓際やカーテンは少し汚かったのと、タオルは2泊分しか用意されていないのに自己申告しないと3日目の分の用意はしておいてくれなかったことだけが少し微妙なところ。
あと、連泊中のゴミの回収は無く自分でホテルの裏まで捨てに行くシステムだそう。
わたしは3日間でさほどゴミが出なかったので、ゴミ出しの機会はなかった。
そして連泊中にリネンの交換や清掃は無く、希望する場合は1500円かかる。
その辺りで宿泊代のコストダウンを図っていることを思えば特に不満は無し。


チェックインを終えて早々に街へ繰り出す。

駅前にフォトロケーションもあり。

駅前広場は綺麗に手入れされていてたくさんのパンジーが咲いていた。

駅前広場にあった函館市民憲章にグッとくる。
核兵器廃絶平和都市宣言に函館市への信頼度がまた上がる。


駅出口横にイカの郵便ポストを発見。かわいい。

駅前から散策がてら歩いてベイエリアへ向かうことに。
なぜか道端に帆立の貝殻が絵馬のように飾られていた。観光地らしくてよい。


空港バスの運転手さんがアナウンスしてくれたように、港に日本丸が停泊していた。

港の向こうに函館山が見え、感動に震える。

わたしは、函館に来たのだ………

集魚灯がたくさんついたイカ釣り漁船にすら函館を感じて嬉しくなる。


ベイエリア近くで現れたコメダ珈琲店
ロゴが港仕様になっていてコメダまでお洒落だ。

金森赤レンガ倉庫に到着!

この辺りは伝統的建造物群保存地区だそう。

カモメ


な、懐かしい…これだよ…この赤レンガ倉庫群の並び…

赤レンガの正面にラッキーピエロことラッピ。
こちらはマリーナ末広店。昔こんなところにラッピあったかな?

外観もすごい情報量だが、店内もはしゃぎ・極み。

この時点で15時ごろだったが、昼食をまだ摂っていなかった。
昼はラッピにすると決めていたのだが、御目当ての店舗はこちらではない。

もう少し奥に歩みを進めると見えてきた景色に感動で打ち震える。どれだけ震えるんだ。

この、ハセストとラッピとカリフォルニアベイビーの並びの向こうに、函館山。これだ、これこそ函館だ。
高校一年生の頃に初めて来た時からa boy 〜ずっと忘れない〜、この景色。
ああ、わたしは函館に来たのだな、と何度目かの実感をしてちと泣いた。

ラッピこと、ラッキーピエロ ベイエリア本店。

ラッキーピエロとは函館のローカルチェーン店で、ハンバーガー店と思わせておいて焼きそばやオムライスやカレーなんかもある、なんでもありのお店なのだ。

金賞受賞、ご当地バーガー全国NO.1と書かれているように、どぎつい見た目に比例して?非常に人気のあるファストフード店である。

店内にはメリーゴーランドの馬もいて、なんとブランコ席もある。今回わたしはブランコ席に座った。

不安定そうに見えて座ると意外と安定しているのである。
店内は緑を基調にしていてお洒落。

レジ前のカオスさもむしろ良い。

オリジナルグッズが多いので、グラスやマグカップ、Tシャツやなぜか松前漬けまである。なんでもありである。

GLAYよありがとう。JIROくんありがとう。ラッキーピエロのオリジナルTシャツ」
このPOPがまだ残っていたことに感動した。10数年…もしかすると20年ものではないだろうか。

店内にはGLAYへの感謝状が。
「グレイ殿」に味がある。

なぜGLAYラッキーピエロに感謝されているのかというと、今の10代の子は知らないかもしれないが、90年代当時この函館出身4人組バンドは爆発的人気があった。当時1日で20万人を集客する野外ライブが出来るぐらいのモンスターバンドなのだ。
ちなみに東京ドームのキャパが5.5万人なので、その4倍弱の集客のライブをしたということである。

話は逸れたが、彼らはその大人気の当時から函館のソウルフードとしてラッピを紹介していたので、ローカルチェーン店であるラッキーピエロの名を全国に知らしめてくれたことに対する感謝状である。

感謝状の上に「生涯無料証明書」という、昔流行ったアイドルのパチモンの免許証みたいなカードは、メンバーのJIROさんのものである。
ジロウちゃんは90年代に刊行された著書でラッピについて紹介しており、それによりラッピがGLAYの聖地と(ファンの中で勝手に)なったことで多くのファンが今もなお訪れているので、ラッピからGLAYに感謝状と生涯無料証明書を贈呈された。

未だに函館で他のアーティストがライブする時は、必ずと言っていいほど楽屋にはGLAYからラッピのチャイニーズチキンバーガーとハセストの焼き鳥弁当が差し入れされるらしい。
それぐらい縁のある店なので、この感謝状はこの先もずっと店舗に飾り続けていてほしいなと思う。


店舗の壁にはおすすめメニューに並んでGLAYの新聞記事も。

そしてこちらが恋に恋焦がれ恋に泣いたチャイニーズチキンバーガー

「ダントツ人気NO.1セット」で、チャイチキ、ラキポテ、自家製烏龍茶のセット。
バーガー、サイド、ドリンク各種で1番人気のものをセットにしたらしい。分かりやすくてよい。

このセットで700円程度、チャイチキ単品は380円という安さ!
ポテトもただのポテトではない。ミートソースにチーズソースがかかっている贅沢さ。

わたしはこの世の全てのハンバーガーの中でこのチャイニーズチキンバーガーが一番好きだ。

初めて食べた時の感動を今も忘れない。
高校生の時に初めて食べたあの時から、30代になった今も、一口食べた瞬間に美味しい!で頭がいっぱいになる。
チキンもうっすいチキンが1枚入っているのではなく、ごろごろで甘辛く味付けされたチキンが4個ほど挟まっているのだ。
レタスとマヨネーズのバランスがまた良い。
ボリューム満点でこれひとつでかなり満腹になるので、いくつになってもこれを完食できる健康な胃袋を持っていたいなと思う。

ラッピがあるというだけで函館に住む理由になる、それぐらい大好きな食べ物である。
これを読んでいる人にも人生で一度は食べてみてほしい。本当に美味しい。もうすでに恋しい。

ラッキーピエロのいいところはトイレに貼られたこの貼り紙にも現れている。

この店舗がそうなのか全体的にそうなのかは分からないが、店員同士も和気藹々と楽しそうに会話していて良かった。

オリジナルのガチャもある。
回してみたらラキポテのマグネットが出た。やった。

店外にもGLAY

癖の強い自販機。オリジナルのラッキーガラナ🍺

いいポスターだな〜



遅い昼食を終えて満腹になったので、赤レンガ倉庫に戻る。
西波止場
ここは海産品や加工品が売っている広いお土産店。

今日は金森ホールで猿回しの公演があるようで、お猿さんがいた。可愛い。

天然石で作られたアクセサリーショップ

ショップに売っていたアイヌ衣装を着た熊の飾り。

こういうどう考えても明らかに不要物ほど無性に欲しくなってしまう。

お煎餅屋さんがいい匂いをさせていた。

赤レンガ倉庫内にはクリスマスカード専用ポストがあった。クリスマス時期に郵送してくれるらしい。

季節外れのサンタに笑顔が溢れる。
向かいのカウンターでポストカードも販売していたので、自分宛に送ればよかったな。


倉庫間の連絡通路から見える景色もとても綺麗

函館オルゴール堂

入ってすぐ目に入った「TDK with GLAY」の文字に「ここは……1999年…?」と混乱した。懐かしすぎる。

同世代以上の方はご存知だろうか。過去にTDKとコラボしたGLAYのMD(!)が販売されていたことを…
わたしはMD世代である。

GLAYの楽曲のオルゴールコーナーもある。すごいな。

ここのオルゴールはJPOPアーティストの歌も置いてあるので、高校生らしき女の子が母親に「なんで嵐があってSnowManがないのか」ということを言っていてなんだか微笑ましかった。


置いてあるオルゴールがどれもわたしの趣味ど真ん中のものばかりで、目に映るもの全て欲しくなってしまって無駄に店内を3周ぐらいした。


6000円のオルゴール…必要か…?と一晩考えたが、冷静になってもやはり欲しかったので、最終日に再訪してハート型の天使のものと悩んだ末、結局ブルーのメリーゴーランドを購入した。
結果これがリビングに置いてあることでQOLが爆上がりなので、間違いなくこれは必要経費であった。わたしの判断はいつも正しい。
次回訪れた際は天使の方を買おう。なぜならわたしの判断は正しいので。

また少し歩くと蔦の生い茂った洋館のような建物が。
ここは明治館。


ここにもオルゴールが置いてある。

ベイエリアに陽が落ちる…

この金森ホールは高校生の頃GLAYが立った場所なので勝手に思い入れがある。

ベイエリアにあるスタバもお洒落。


陽が落ちる前に函館山に登りたいので、ロープウェイ乗り場方面に歩いて向かうことにした。
道中みかけたシュークリーム専門店。とても美味しそうだったので気になりつつ、満腹のため入店できず。


きたぞ、八幡坂!

八幡坂はわたしが函館で1番好きなスポットだ。
この坂を登って行くのはまぁまぁしんどい。冬に訪れると凍結しているので歩くだけでとても怖い。

この坂は階段を設置して正解だと思う。

そしてこれがわたしが函館で1番好きな景色。

石畳の坂道の両端を彩る街路樹、その果てに見える海と港に停まった船、その向こうに見える山。
海と山に挟まれた函館という街が詰まった、とても美しい景色だと思う。
人々の生活圏内にこんなに美しい景色が溶け込んでいる。ここもまた、わたしが函館という街を愛する要素のひとつだ。

しばらく景色を眺めて、また函館山方面に歩く。

時期が少し遅れたので葉桜になってしまった。

これは八重桜であってる?

ハリストス正教会は残念ながら保存修理の工事中。

また一本道に入ると坂道が出てくる。そりゃそうだ、坂道の上を歩いているのだ。

右手に見えるのはカトリック元町教会。

少し歩くとまた教会。こちらは函館聖ヨハネ教会。

歩いているととても可愛いお店を見つけた。

アクセサリーや展示会をしているお店らしい。
こんなに可愛い外観のアクセサリーショップを15時オープンで出来るなんて…なんて羨ましいんだ…
いや勿論それなりの苦労があるだろうとは思うがなんて素敵な暮らしなんだ…
こんな可愛い店で自分の雑貨やアクセサリーを置いて、たまに自分でも手作りで作ってみたりして、そして自分が作りたいものだけのメニューのカフェを併設したお店を持ちたいな…函館に移住してさ…
新たな夢の誕生である。
人生、夢はないよりある方が悪くはない。夢がある方がいいとは言わない。でもあると悪くはない。
ということで、人生もうなにもしたくない…と思いながら生きていたアラサー女性の老後の夢が出来た。どうかこれを読んでいる人は祝って欲しい。

人間どこで夢が生まれるか分からないものだな、と思いながら歩き続ける。

カフェペルラ

ここはGLAYのリーダー、TAKUROさんお気に入りのカフェで、窓から景色を眺めながら曲を作っていたという場所。
昔に閉店してしまっていたのが2020年に再オープンしたとのことで楽しみにしていたのに、残念ながらコロナ影響で休業していた…悲しい…


カフェペルラのすぐ上にあるのが函館ロープウェイ。

GW中の混雑具合を調べていたら夕方ごろには1時間待ちぐらいになるほど混んでいたとのことで、気持ち早めに来てみたが、GW中の平日ということもあって全く待ちなしだった。


ロープウェイからの景色

ロープウェイを降りて、展望台側ではない方に行くとそちらから見える景色もとても綺麗だった。


嘘みたいに綺麗な夕陽に心洗われる。



展望台に移動。月が綺麗に見える。

夕方から夜になるまで1時間ほど景色を眺めた。
言葉はいらない美しさ…





函館山を十分堪能したので、またロープウェイで山を降りる。

市電の線路がある景色、とても良い。

また夜のベイエリアに戻る。

今日の夕食はカリフォルニアベイビーにする予定が時間より早く閉店していたので、ハセストのやき弁にすることに。

ハセガワストアは函館地区限定のコンビニ。(写真は昼に撮った)

看板に大きくあるように、“やきとり弁当”が看板メニューであり函館のご当地グルメ
これまた大好きな食べ物である。今夜の夕食はこれだ!

店内にはやき弁の誕生秘話も。

そう、ハセストのやきとり弁当とは豚バラの串焼き弁当なのだ!
注文してから焼き上げるのでいつでも出来立てが食べられる。
夕食の時間帯ということもあって、ベイエリア店はやき弁待ちの人が多く出来上がりまで20分ほど待った。

ベイエリア店の店内にはこれまたGLAYだらけ。


ハセストとGLAYもまたラッピと同じように深い仲なのである。


またホテルまで20分歩いて帰る元気は無かったので、タクシーでホテルに戻る。
待望のやきとり弁当である。

こちら小で確か500円以下。
期間限定で塩、たれ、うま辛の3種類セットがあったのでそれにした。
うんまい。変わらぬ美味しさ。
焼いた豚バラの下にある海苔ご飯がまた美味しいのだ。
ちなみにわたしはたれと僅差で塩が1番好き。

ああ、写真を見ているだけで今すぐにでも食べたい…
ラッピとハセストがあるというだけで、日本のどの都市よりもアドバンテージがあることを函館市民は自覚してほしい。


ホテルのVODで映画を観ながら今日一日をツイッターで振り返り、函館に来たんだなぁと満たされた気持ちで5/6を終えた。

この日の歩数は16600歩。

Esquire 2022.5月号 SUHOインタビュー


💬モンブランとの縁について話を聞きました。 すべてがコマーシャルであるこの時代には珍しいリアルストーリーでした。
🐰召集解除後、ファンに知らせるために手紙を書いてインスタグラムに載せたことがあるんですよ。 写真を撮る時横に普段使う万年筆を一緒に置きました。 写真にペンが本当に少しだけ見えたのですが、モンブラン関係者の方がそれに気付いたみたいです。僕が歌詞を書く時もモンブランペンで書くんです。

💬 そのペンが星の王子さまエディションだということはご存知でしたか。
🐰分かりました。友達がプレゼントしてくれたペンです。

💬あは!スホさんが星の王子さまを好きだと知ってくれてたんですね。
🐰幼い頃から星の王子さまが好きでしたから。 誕生日プレゼントでした。

💬「 星の王子さまは人生の様々な視点で見るたびにその内容が少し違う」というインタビューを覚えています。
🐰そうですそうです。 年を取って読むと、また違うんです(笑)

💬 来週の月曜日に『Grey suit』が公開されます。 聴いてみてからインタビューをしたいんですが、聴けなくて残念です。 今回のアルバムの主題は「時間」ですが、どんな時間ですか?
🐰実は召集期間です。 服務して過ごした時間 。1年9ヵ月間、ファンに会えなかった時間、その時感じて経験した感情をアルバムを通じて話したかったんです。

💬 グレスーツというタイトルがその時間についてのメタファーですか?
🐰 メタファーと言えます。「モモ」という小説から持ってきたモチーフです。 その小説を読むと人々の時間を奪う灰色のスーツを着た人々が登場します。
時間を盗む灰色のスーツを着た紳士たちと、彼らを追いかけ、再び時間を取り戻してくれる神秘的な女の子「モモ」の物語が小説の中心軸です。 童話ですが大人でも読める、時間の大切さを扱った小説です。1年9ヵ月間ファンに会えなかった時間が、ある意味では私にとって失われた時間のように感じました。 時間を盗んだ灰色のスーツの紳士たちをメタファーで借用してアルバム名で使ったんです。
その期間、他のメンバーたちが活動するのを見ながら「世界はあんなに美しく、こんなに早く流れるのに僕だけ止まってるんだな。僕が生きる今の時間は白黒なのに、あの世界はカラーなんだな」と感じたんです。

💬 僕の白黒時間についての歌としても見られるんですね。
🐰そうですね(笑)

💬 本がお好きなんですね。
🐰活動中は本をたくさん読めませんでした。僕がずっと「好きな本は星の王子さま」と言っていたのも、実はデビュー後に読んだ本が多くなかったからです。 デビュー前に読んで具体的に知っていてよく説明できる小説が『星の王子さま』で止まっていたんですよ。 活動してる時より服務期間の方が相対的に時間があったので、本をたくさん読みました。

💬男性は普通服務期間に本を一番たくさん読んでいるようです(笑)今回のアルバムの歌詞の中に、時間についての省察が入ったパンチラインはありますか?
🐰パンチラインとまでは言えませんが、‘너와 나 다시는 no more grey’と言ってファンに会ってグレースーツを脱ぐ内容の歌詞があります。 これまで白黒だったけど、もう一度カラフルになる内容です。

💬 6曲全曲の作詞に参加しましたが、一番気に入った歌詞はありますか?
🐰‘이리温’という歌の前半に「ある日君が僕に吹いてきて(中略)明るい光の下で僕が君を抱きしめてあげるから」というフレーズがあります。 首尾相関(始めと終わりが互いに関連があるという意味)で、最後の小節には「その日君が僕に飛んできて明るい笑顔を込めて君を抱きしめてあげるから」と書かれています。 前半には君が受動的に吹いてきて、明るい光がただあっただけです。 それが、後半部分の歌詞では、君は僕に能動的に飛んできて、僕も明るい笑顔を込めて抱きしめます。

💬偶然だと思ったのに、必然だったんですね。
🐰そうです。僕も君も、自分たちも知らないうちに偶然出会ったのですが、今はお互いを信じる存在になってお互いに近づくために能動的に動くという意味で「이리 온」としたんです。

💬 その歌の副題が「Bearhug」です。 ぎゅっと抱きしめてあげたい人に歌ってあげる歌ですね。
🐰僕が歌う時は、実は子供に歌ってあげるという気持ちで歌いました。「知ってる。あなたは大人になりたがってる」という歌詞があるんです。 でも、他の人たちを考えたりもしました。 例えば、「特に約束はないけど家に帰りたくなくて彷徨っている仕事帰りの会社員たち」に歌ってあげてもいい歌だと思って書いてみました。

💬 気に入ったメロディーは何ですか?
🐰一曲だけおすすめしたくないんですが、また「이리온 」ですね。この歌のサビに、少し高い高音部が出てきます。半音ずつ半音ずつ上がって感情を爆発させます。 多分、ありふれたメロディーではないと思います。
普通歌を聴きながら、僕たちは無意識的にメロディーの展開を予想するんです。「この音の次はこの音、またはあの音が出るだろう」って。また、その音の中で似合う音が出ると楽に聞こえます。でもこのメロディーは予想していた音ではなく、緊張感を誘発しながらも似合っていてよかったです。

💬 多くの作曲家の方々がこうおっしゃっていました。 一番いいメロディーは、予想を少しずらしていくんです。
🐰正確にそういうメロディーです。

💬 どの歌を書く時が一番悩みましたか。
🐰「Morning Star」です。 1番トラックです。 最初にこの歌を構想した時は「コンサートの舞台に立っている場面で目を覚ましてみたら、夢だということに気づく。 現実の僕は国家のために働いているけど、僕がいるべきところはステージの上」という内容でした。
そう書いているうちに結局「夢から覚めたくない。 夢にだけ留まっていたい」という結論が出たんですよ。 結局、他の作詞家たちと相談した末に覆すことにしました。 逆に服務期間を夢に変えたんです。 そうやって変えてから「僕を夢で起こして」という内容の歌詞が可能になったんです。 その過程に至るまで悩みが多かったです。

💬 作詞をしてからでしょうか? 手楽器にも関心が多いようです。 インスタグラムにギターの写真がアップされていました。
🐰服務期間から身につけているのでまだお見せするには不十分です。 いつかコンサートやファンミーティングでお見せしたい気持ちはあります。ギターは本当にずっと握っていると上達するんです。 レッスンを受けた時はそんなに伸びなかったのに、親知らずを抜いた時すごく上達しました。 親知らずを抜いたら英語の勉強もできず、歌の練習もできず、揺れると痛くてダンスも踊れなかったんです。 その時家にだけいながらギターをずっと握っていました。 親知らずを抜いて家にいるその3週間本当にぱっと効きました。

💬 なんだか、ギターの写真をアップしたポスティングに「C」と書いてあったんです。 完全に初心者なら「G」を握ったと思います。 でも本当に面白いのが、海外ファンたちの「Cは『キューティ』という意味」というコメントでした。
🐰(笑)その日がギターを買った日でした。

💬 最後のインタビューの一つが『バスケットボール人生』とのインタビューでした。 普段、スホぐらいのスーパースターが普段着を着てセットアップされていない状態で紙面インタビューに登場することはほとんどなくて驚きました。
🐰あの日のインタビューの主人公である'モ・ヨンフン'という友達は僕ととても親しくて。本当にとても親しいです。 僕が恵みも沢山受けたんですよ。 他の理由はありませんでした。

💬 本当の友情ですね。
🐰そうです。中学校の同じクラスで、その子も転校生、私も転校生でした。 その友達はバスケットボール部なので実は普通の学生たちと親しくなることがあまりなかったです。なぜか僕とはよく合いました。デビュー後もずっと連絡して過ごしました。 その友達もプロバスケットボールデビューをしたりもしました。 肘と膝の負傷が続き、選手生活をやめる時は本当に胸が痛かったです。 引退後にスキルトレーニングセンターを設けて始める段階ですが、少しでも役に立ちたかったです。

💬今年がデビュー10周年です。 スホさんは練習生まで合わせると…
🐰17年目です。

💬先ほど話した友人との関係が、私がスホさんを特別だと思う理由でもあると思います。普通のアイドルトラックだけを歩いてきた方と会ってみると「MTに行ってみたいです」「大学生活をしてみたいです」「実は友達が多くないです」と言います。 それに対し、スホさんは遥かに多様な関係とその関係で生じた様々な感情を感じたのです。
🐰そう考えると、僕は全部やってみましたね。実は練習生だったんですが、両親の影響で中高生の生活も本当に一生懸命しましたから。



💬 どんな時代に経験した感情が一番多様だったと思いますか。
🐰高校3年生から大学1年生までです。 その時SHINee先輩たちがデビューしました。 僕と一緒に練習していた先輩たちがデビューしたんです。 その時、僕は足の怪我も負って、いろんな理由でデビューが延期された時代でした。 その状態で大学入試を準備したのです。 高3は大変じゃないですか?

💬 もちろんですよ。大変です。 韓国人には一番しんどい1年です。
🐰本当にすべてを諦めたい時がありました。 両親と兄、そして演技の先生の激励のおかげで最後までやることができました。韓芸(韓国芸術総合学校)映画科でその時出会った友人たちが今はみんな売れっ子俳優として活動中です。 その友達とOTにも行ってMTにも行って大学生活を楽しみました。

💬 わ…本当に楽しかったでしょうね。
🐰(笑)その1年を本当に楽しく過ごしました。
高校3年生から大学1年生までが、今までの人生の喜怒哀楽が最も圧縮的に盛り込まれている感じです。

💬今本当に幸せな表情をしていますよ。
🐰本当に楽しかったからです。

💬 “グローリーデイ”のサンウなどを演じるのを見て、スホさんは感情の図書館の中に本物の感情を集めた人だと思いました。 僕が合ってましたね。
🐰ありがとうございます。実は旅行地ではできれば地下鉄やバスに乗ります。そういう日常の感情を感じることが旅行に行く大きな理由の一つでした。

💬 そしたら幸せですか?
🐰(笑)そうですね。 見知らぬ都市の地下鉄路線表も探してみて、バスも乗ってみることが全部幸せです。

💬 スホさんのフィルモグラフィは長くはないんですが、一緒に過ごした俳優たちの面々がすごいですね。彼らと知り合いだという事実だけでも心強いでしょう。
🐰“グローリーデイ”チームの友達とは本当に親しいです。青春映画なので同年代たちと出演して、監督を含めて仲間のように親しくなりました。 まだ団体メッセージルームがあります。この前開かれたジュンヨリヒョンの写真展にも行ってきました。

💬国際で開かれたライカ展示ですか。
🐰はい、先週行ってきました。 そのチームとみんな仲良く、ハギュニヒョンとも親しいです。

💬 シン・ハギュンさんにハギュニヒョンと呼べるというのが本当に羨ましいですね。本当に多くの人が演技の神だと言いますよね。
🐰僕が幼くて演技に関心を持って勉強を始めたばかりの時から、シン・ハギュン先輩の演技を見ながら育ちました。”共同警備区域JSA”“復讐は私のもの”を見て感嘆しました。
それで“선물 ”で会った時は芸能人ではなく尊敬する偉人に会った感じでした(笑)

💬“선물 ”これは本当は実はショートフィルムなんですが、シン・ハギュンさんはそんな中でもすごい熱演をされていましたね。
🐰ホ・ジノ監督もとても良かったです。 俳優だけでなく制作陣とのケミまで良ければ本当に楽な演技ができると思います。僕の場合は“グローリーデイ”と“선물”がそうでした。

💬私は“선물 ”でハヌルがスホだとは分かりませんでした。眼鏡をかけた工科大生の役割を本当に完璧に果たしたので。
🐰本当にただの工科大生として見てくださるなんて、ありがとうございます。(笑)

💬 この前はセフンさんに会いました。 その時もそうだし、他のインタビューでもセフンさんがスホさんに対する愛情を露わにしていましたね。セフンはスホにとってどんな存在ですか?
🐰実の弟?もちろんメンバーたちもみんな大切ですが、セフンは特別です。とても幼い時から見ていたんですよ。5~6年間、同じ部屋を使ってもいました。相部屋を使っていた他のメンバーたちが、各自の部屋を使うと言って独立した時も、僕たちは一緒に使いました。 セフンに聞いてみたら、一人で寝るのが怖いって言ってました。
「ヒョンが不便なら一人部屋を使ってもいいけど、僕は一緒に使った方がいい」って言うんです。 断ることができなかったし、セフンは僕がいつも抱きしめてあげる存在になりました。

💬 わぁ、それは本当に愛情ですね。 いつ初めて会いましたか?
🐰初めて会った時、セフンが小学6年生でした。僕は高校1年生でした。 今はただのヒョンだけど、その時は僕の目もちゃんと見れなかったんですよ。まず僕より背が小さかったです。 今はすごく大きくなって僕が目も見れません(笑)

💬 もうスホ人生の3ラウンド目が始まったみたいです。 EXOデビュー、ソロデビューまでが2ラウンドだったとしたら、ポスト召集解除が3ラウンドというわけです。どんな感じですか?
🐰やりたいことを全部やる3ラウンドになるんじゃないですかね?意地ではなく自分の確信が大きくなったんですよ。
10年間活動をしながら自身について本当によく分かるようになりました。僕の長所は何で、短所は何か。足りない部分、補完すべき点は何か。 また補完できる点は何なのか。10年間僕を知り、2年間自分が足りない部分を補完したので、これからは僕ができると思うことは何でも試してみることができるという確信があります。

💬 確かな自己認識が自己確信であるわけですね。
🐰そうです。

💬 できることとできないことを明確に知っている己を信じる。 ちょっと飾ってみると本当に素敵な言葉ですね。ところで今スホの位置でもまだ叶えたいことはありますか? 誰かにとってはスホが夢だと思いますが?
🐰音楽で見ればスホだけの色が生まれ、誰が聞いてもスホの音楽だということが分かる僕のジャンルを作りたいです。今回のアルバムが終わったら、作曲に挑戦してみる計画です。 俳優としては、ハリウッドという空間で作業してみるのが夢です。すでに多くの先輩たちがいらっしゃるじゃないですか。彼らのように素晴らしい作品の大きな役割ではなく、グローバルな俳優たちとハリウッドシステムの中で作品を作る経験を必ずしてみたいです。

💬なぜか今日言った言葉が自己成就的予言になりそうですね。
🐰ありがたい話ですね。

現代人は電気羆の夢を見るか?知床1人旅-day2&3 ただ夜が明けることを

午前中から夕方まで氷点下の気温の中出歩いていたので、部屋についてひと段落した途端ドッと疲れがきて、なんだか遠くの方に体調不良の音が聞こえてきた。
これはいかん、と部屋に座布団を敷いて寝転がる。
現在17時過ぎ、夜ご飯は18:30でお願いしたので、それまでごろごろと寝転んで過ごした。
ゆっくり身体を休めると体調不良の予感も鳴りを潜め、夕食の時間にはすっかり元気になっていた。

時間になったので一階の食事処に向かうと、既にばっちり準備がされていた。

なんだかお洒落だ。

串に刺された具材を自分で揚げる天ぷららしい。
常に揚げたてを食べられて、衣をまぶして自分で揚げる楽しみもあるのが嬉しい。

こちらが本日のメニュー

美味しく食べても具材が分からないことがあるので、こうしてお品書きがあると助かる。


左上から時計回りに、冷磯麺、ほうれん草と山菜の胡麻和え、道産三元豚の低温調理(山葡萄ジュレかけ)、食前酒 北海道ハスカップ酒、帆立のわさび漬け、スモークサーモン・胡瓜・海藻・自家製こけもも酢。


 

お刺身は羅臼産 ぶり船上〆、近海産 甘海老、羅臼産 桜鱒、ウトロ産 やなぎたこ。

天ぷらの具材はかぼちゃ、じゃがいも、茄子、チーズ、しいたけ、ピーマン、ささみの大葉巻き、知床産帆立。
これらを一つずつ揚げて、添えられたふのり塩でいただく。
火傷しそうなぐらい熱い食べ物が好きなので、ずっと揚げたてを食べられるのが嬉しかった。天ぷらは特に揚げたてに限る。
自分でやるのはめんどくさいという人も居るかもしれないが、私は自分で加減を見られるこのスタイルが好きだ。宿からの「食事に楽しみを」という気持ちも感じられる。


焼き物はウトロ産秋鮭のバター焼きか羅臼産帆立の浜焼きが選べたので、鮭にした。
これもふわふわでとても美味しい。
真ん中が割れているのはわたしが写真を撮るのを忘れて箸を一度刺してしまったから。待ちきれなかった。


帆立の味噌汁とご飯も。なんとも贅沢なお味噌汁。


せっかくなのでお酒も注文した。
知床限定、鮭の酒。普段日本酒は飲まないが、とても飲みやすく美味しかった。
パッケージもお猪口も可愛い。

どの食事もとても美味しかった。
その中でも1番を決めるとすると、小鉢にあった帆立のわさび漬け!
本当に美味しかった。貝全般がそんなに好きではないので、普段は帆立を食べることがなく、帆立が出てきてもあまり嬉しい気持ちもない。かといって食べられないわけではないので食べる、という感じで口にした途端美味しすぎて驚いた。
知床滞在中、どの食事も美味しかったが、1番を決めるとするならこれだと思う。

宿の口コミではボリュームが足りないと書いてる人がいたが、たしかに大食いの人であれば物足りない気持ちはあるかもしれない。
でもわたしも恐らく平均の女性よりはよく食べる方だが、天ぷらも一つずつ揚げながらゆっくり食べるので、食べ終わった頃には満腹になっていた。
なので量的にも十分だと思う。

天ぷらの油は固形燃料で暖めていて、わりと消費が早くすぐに消えてしまうのだが、消える前にスタッフの方が見計らって換えに来てくれるので不自由はなかった。
配膳してくれる女性も若い人で、飲み屋で出会ったあの子と同じように他所の土地から観光繁忙期に向けてこちらに働きに来た子だという。
その子とも食事の合間にお話し出来て楽しかった。
出会う人皆にあたたかさを感じた。


大満足で食事を終え、ホテルのロビー周辺を散策し、コーヒーサーバーで食後のコーヒーを淹れ、暖炉前の椅子に揺られながら置かれていた北海道新聞を読んだ。
普段新聞は読まないが、地方の新聞に興味があった。
そこに載っていたコラムが記憶に残っている。

「戦争はむごい、恐ろしい。それを心底分かっている人間、分かろうとする人間にこそ、日本の舵取りをする資格があると思うんや」
2022年3月の今の世界で改めて読むと、とても身に沁みる言葉だ。


少しゆっくりした後、露天風呂の予約の時間になったので下に向かう。
この宿のいいところのひとつに、貸切露天風呂がある。
確か1時間程度で区切られていて、チェックイン時に予約した時間で貸切露天風呂が楽しめるのだ。
ホテル内には内湯もあり、そちらも源泉かけ流しの温泉になっている。
とりあえず内湯で身体と頭を洗ってから露天風呂に行くことにした。
内湯と露天風呂は離れており、露天風呂は離れにあるので一度服を着て、鍵とランタンを借りて行かなければいけない。

まず内湯に入ると、先程夕食時に配膳してくれた女の子が入っていて驚いた。
スタッフと顔を合わせるアットホームさも面白い。

内湯は少し小さめの銭湯ぐらいの広さで、洗い場は4〜5個ぐらい。
こちらも温泉なのでゆっくり温まる。

そのあとまた浴衣を着て、露天風呂の鍵を借りにフロントに声を掛けると、外に出るためのダウンコートを貸し出してくれた。
一旦裏口を出て離れに行くので、コートの貸し出しがあるらしい。確かにすぐそことはいえこのマイナス10度の中浴衣1枚で歩くことはできない。
コートとランタンを借りて裏口に行くと、出口に長靴が置いてあるので、それを履いて離れの露天風呂に向かう。


裏口を出てすぐのこの階段を登ると、脱衣場と露天風呂がある。

移動して服を脱いだだけで濡れた髪が凍ってしまったのには笑った。
マイナス10度の世界、すごいぞ。

露天風呂はこちら。温度が下がらないように一部蓋がされている。

湯船からの視点

湯船に入って上を見ると、満天の星空が見える。

当然ながら、写真よりも肉眼で見る方がよっぽど綺麗な星空だった。
真冬の氷点下の空気の中、満天の冬の星空を見上げながらあったかい湯に浸かり、好きな音楽を聴く。
とても贅沢な時間だった。この非日常感、このためにわたしはここに来たのだと思った。

今日一日のことを思い出しながら、ゆっくりと湯に浸かると頭と身体のすべてがほぐれて行くような気がした。

冬の星空を見れたので、今度来る時は夕方に夕日を見ながら入るのもいいかもしれない。
やっぱり春も夏も秋も冬も訪れなければならない。

ゆっくり楽しんだので部屋に戻る。
裏口の近くを見てみると、ここにも至る所に動物の足跡が。ホテルのすぐ裏にも動物がたくさん暮らしていることが分かる。

この小ささと歩き方はテンじゃないか?

このサイズはキツネ?と考えるだけで楽しい。


楽しかったなぁ……と濃かった今日一日を噛み締めて布団に入った。



知床最後の日。
きちんと起きて時間通り朝食に向かった。
昨夜の夕食でこの宿の食事は美味しいことが分かったので、朝食にも期待が募る。

朝食メニュー

豪華な朝ご飯!

味噌汁の味噌は自家製、ふのりも手摘みして天日干ししたものらしい。
いくらの醤油漬けとドレッシングも自家製とのこと。
手作り満載で嬉しい。

サラダには生ハムとじゃがいも入り。ドレッシングも2種類どちらもとっても美味しい!
メニューは焼き鮭、ふきの煮付け、きんぴら、いくら、大根の酢漬け、ヨーグルト、湯葉、卵焼き。

どれもとっても美味しかった!
これを書いている間も恋しくなるぐらい良い朝食だった。
連泊すれば毎日この朝食が食べられるのだろうか。あぁ、毎日食べたい。


とても綺麗に食べたので思わず写真を撮ってしまった。

人も優しく食事も美味しく、各地を旅行してきたがこんなに最高な宿は初めてかもしれない…
離れ難く思いながら、部屋に戻って身支度をする。

部屋の窓からの景色。

海が見える部屋は最高。


そろそろ出る時間になったのでチェックアウトする。
この宿は少し離れたところにあるので、ホテルの人がウトロ周辺の希望の場所まで送迎してくれるのだ。
帰りは道の駅から空港バスに乗るので、道の駅へ送って頂いた。

道の駅 うとろ・シリエトク

シリエトクはアイヌ語。知床の由来はここからだそう。

昨日の道の駅での買い物は冷凍の海鮮ものだけだったので、最後の買い物をする。
また要らないものまで沢山お土産を買い込んで、バスの時間まで道の駅の出口付近をうろついてみた。


ポケモンの可愛いマンホールを発見

なぜかロコンとパルキア

「ポケふた」という企画で、北海道だけじゃなく全国にこのポケモン柄のマンホールがあるらしい。初めて知った。

わたしの県にはどこにあるのかと調べてみたら

3つもあるのに全て淡路島でズッコケた。
偏りすぎだろ。そりゃ見たことないはずだ。

無い県もあるらしいが、わりと全国にあるそうなので、これを読んでる方もお近くのポケふたを見に行くのもいいかもしれない。

知床のオリジナルマンホールも可愛い

旅行先でその土地の可愛いマンホールを見るのが好きだ。


トイレに行くと、個室内に「羆にエサをやらないで」という張り紙が貼ってあった。

野生の羆が、人間が軽い気持ちで与えたソーセージから命を奪われてしまった話。
悲しすぎて読むだけで涙ぐんでしまった。
知床に来ると、至る所に「野生動物に餌を与えないで」と書かれている。こんなに色んなところに書いて注意喚起しても、愚かな観光客は軽い気持ちで野生動物に餌を与えるのであろう。
トイレの個室といういやでも目に入る場所にこんなに具体的な悲しい話を載せても、そういう人は読まないのだろう。
そう思うと怒りに震えた。

住む場所を奪うだけでなく、その軽率な行動がどんな結末を招くのか思い至らない、考えの無さに心底腹が立つ。それが自分と同じ人間というカテゴリに属しているから尚更許し難い。

泣いたり怒ったりしながら隣の知床世界遺産センターに入る。

知床の自然についての資料展示があって、もっと時間が取れる時にこればよかったと後悔した。

オオワシオジロワシの確認数のグラフもある。

こう見るとここウトロより羅臼の方が多く確認されている。

もっとゆっくり見て回りたかったが、バスの時間が迫っているので外に出た。
万一このバスを逃したらまたタクシーで今度は3時間もかけて空港へ行かなければいけない。それだけは絶対に避けたいので、余裕を持ってバス停で待つ。

降る雪がすべて雪の結晶になっている。

こんなに分かりやすい結晶のまま降ることがあるのかと驚いた。

無事バスにも乗れたので、あとは空港まで揺られるのみ。
かなり後ろ髪を引かれつつ、ウトロを後にする。

車窓からこの景色を見ているだけで感極まってしまう。

やはりわたしは冬の北海道が世界一好きだ。
初めて1人で遠征したのは高校1年生の時の函館ということもあり、昔から北海道には一方的な思い入れがあるのだが、今回の旅でますます北の大地への憧れを募らせてしまった。
 

途中、白鳥が沢山いる湖を通った。

一瞬すぎて写真が撮れなかったが、写真よりもっとたくさん白鳥がいた。ここもいつか行ってみたい。

無事女満別空港に到着。かなりこぢんまりしている。

食べる気満々だったスープカレー、時間がなくて食べられず……

代わりにカレーパンを買って帰った。

空港で最後の追い込みのようにまたお土産を爆買いし、待合室では白い恋人ソフトを購入。

購入してすぐに搭乗案内が来てしまって、大急ぎで食べる。生き急ぐな。


行きも帰りも雪で遅延することもなく、定刻通り出発。
本当に楽しかった。絶対にまた来るよと誓いながら、女満別空港を発った。

雪の降る地は空から見ても美しい。

航空券が安いからという理由だけで軽い気持ちで決めた旅だったが、想像以上に意味のある旅となった。
飲み屋で話した漁師さんが、リピーターで毎年来る人も多いと言っていた意味が良くわかる。私にとっても毎年訪れたい、思い入れのある場所になった。


知床で買ったお土産はこちら。

道の駅での購入品

トコさんタオルが可愛い。

木彫りのくまさん。

木彫りのくまなんてものはどう考えても不要物なので、普段の自分なら理性が働き購入には至らないが、この旅は不要物も思いのまま購入する旅。素朴で可愛いので買って帰った。
テレビ台に置いているが、目に入ると楽しかった思い出がじんわり蘇るので、買ってよかった。
不要物こそ必要なのだ、人生には。


ベタなお土産の筆頭、マグネット。

下の網走のものは網走監獄で買ったもの。
木彫りのアザラシとキツネと丸いトコさんのものは道の駅で。
冷蔵庫に貼りつけていると、このとぼけた顔が目に入るだけで少し優しい気持ちになる。

昨日ホテルで飲んだ鮭の酒が売っていたのでこちらも購入。

鹿肉カレーも買ってみた。
鹿肉の味はよく分からなかったが、美味しかった。


これは女満別空港での購入品

やっぱり北海道の土産物はただでさえ買いたいものが多すぎる。
札幌農学校クッキーが素朴なのにとても美味しかった。おすすめのお土産とされているだけある。


これは道の駅で買って冷凍配送した毛蟹と、鮭のあらで作った粕汁。実家に送って母に料理してもらった。

鮭がすごく美味しい。
毛蟹も初めて食べた。蟹味噌もあまり美味しいイメージがなかったが、この歳になってから口にすると美味しく食べられた。

鮭の親子漬けと明太子と鮭とば


この鮭とばは飲み屋のお姉さんからこれが1番美味しいとお薦めされたもの。
パッケージの左に作成者の漁師さんの写真が載っているのだが、飲み屋でお話しした漁師さんの顔で笑った。
あの人が作ったらしい。
この鮭とばも醤油味で脂が乗っていてかなり美味しかった。お取り寄せしたい。


知床のクマさん。

知床の小麦「きたほなみ」を使用しているそう。
冷たいままより温めて食べた方が美味しかった。


これは網走監獄でのお土産。ポストカードは網走駅の観光案内所で。
そういや食べていいオソマ、まだ食べてないな…

月寒あんぱんの中身。
鶴見中尉 いない なぜ



とても充実した旅であったことが、そして知床という土地の魅力が、この記事を読んだ方に伝わったなら長々と書いた甲斐があるというものだが、どうだろうか?

この記事を読んだ方の行きたい旅行先のひとつに、知床が入れば何よりだ。


人生でこんなに自然に触れたことはなかったこともあり、いつもぼんやり考えていたことを考え直すきっかけにもなって、私にとってはとても意味深い3日間だった。
毎年訪れる人も多いと聞いたが、その気持ちもよく分かる。
現に、わたしもすでに今年の10月にまた訪れる計画を立てている。
秋にはもっと動物に会えるのかと思うと、今からとても楽しみだ。



そういえば、この旅で実感したことがある。
それは「食べられるものは多い方がいい」ということ。
当然といえばそうなのだが、どんな料理が出されても美味しく食べられるということは、旅の充足感を上乗せしてくれる。

例えばふき。これも普段なら口にしたくないもののひとつだったが、初めに思い切って食べれば美味しく食べられた。
あとはいくら。いくらもこの1年ほどで食べられるようになったものだ。昔は一度食べても特に美味しさが分からず、その後ずっと食わず嫌いだったものが、この一年ぐらいでもう一度口にしたところ美味しさが分かる様になり、今では好物になった。
そのおかげで、この旅でも美味しいいくらを存分に楽しむことが出来た。

今のうちに食べられないものを無くしていけば、どこに行って何が出ても全部美味しく食べられるのではないだろうか。
それが食材と作り手への最大の感謝の表れにもなるので、これからもなるべく食べられないものは無くしていきたいと思う。


でもトマトときゅうり、おめーらはダメだ。



これが旅の締めくくりでいいだろうか。

現代人は電気羆の夢を見るか?知床1人旅-day2 生き物たち

午前中を活動的に過ごし、すっかり汗をかいて沢山食べた朝食も消化しきったので、昼食を取りに道の駅へ。

自動ドアを通ってすぐ、昨日の夜に飲み屋で知り合った女の子とばったり出会った。
わぁ昨日ぶり!と再会に喜んでいると、彼女も同じく昼食を取ろうとしていたとのことで、一緒に食事に行くことに。
普段ならば2回出会ったぐらいの人と食事に行くなら1人で食べた方がよっぽど気楽で良いと思うタイプだが、彼女の人柄と旅の高揚感からそんな選択肢はなかった。

道の駅の向かいにある店が気になるとのことで、彼女の車に荷物を置かせてもらってそちらに向かう。
日曜日だというのに、辺りは歩く人もほとんどおらず、営業している飲食店も少ない。
大丈夫なのかこれは…と思いつつ、道路を渡って目的の店に到着。

三代目千葉商店さん。

本日のランチ、ビーフトマトカレーと唐揚げのセット。
サラダには生ハムが2枚も乗る太っ腹さ。
スープとデザートまで付いてなんと990円!お安い!

その価格でありながら、ビーフカレーも唐揚げも熱々でそこらの飲食店よりかなり美味しかった。

デザートはプリン。
このプリンがまた濃厚でとっても美味しい。食べた瞬間に「美味しい!」と唸るレベル。

食事をゆっくり頂きながら、昨日知り合った子とお互いの人生の話をした。

昨晩に飲み屋でちらりと話を聞いてはいたが、深くその日々の話を聞くととても瑞々しく、眩しい。
例えば山小屋で仕事をしているうちは休日も山から降りない(またその日のうちに登山して戻らなければいけないので)という話もしていたので、当然にその生活なりの苦労は沢山あるのだろうが、非日常を日常にして生活するというのはどうしても憧れる。

彼女もまた、8年以上同じ職場で会社員として勤める私のことをとても尊敬すると言ってくれた。
こうしてそれぞれ全く違う人生を歩みながら、互いの生き方を尊重し尊敬し合えるということが素晴らしいと思う。

彼女は私の地元のことも好きで、関西に行ったら絶対に訪れる場所だと言ってくれたので、また来たらその際は必ず連絡をくれと約束をした。
再会したらまたわくわくする話を聞かせてもらえるのだろうと思うと、その時がとても楽しみだ。

楽しい食事を終え、海産物の土産を買いに道の駅へ戻った。

こけももアイス、食べてみたいなと思いつつ寒くて全く食べる気が起きず断念。
冬以外のシーズンに来た時に食べることとする。

オフシーズンなので、冷凍ものの蟹が売っている。

自宅用に毛蟹を2杯買った。想像よりかなり安い。
今思えば隣のボタンエビも買っておけばよかったな…

良いお値段のいくら

知床トコさんというくまのキャラがウトロの至る所に居た。グッズ展開も豊富で可愛い。
記念にトコさんタオルを購入。自宅で活躍中。

蟹や鮭親子漬け、鮭のあら、鮭とば、明太子などなど、ここぞとばかりに食べたいものを買い込み、自宅へ冷凍配送してもらった。
この旅の大義名分として「コロナ禍に訪れたからにはその土地に大いにお金を落とす」と掲げていたので、少しでも欲しい・食べたいと思えば迷いなく購入した。気持ちの良い買い物であった。

買い物に付き合ってくれた旅先の友はとても親切に、少し離れた本日のホテルまでレンタカーで送ってくれた。
知り合えてとても嬉しかった、また必ず会おう、お互い頑張ろうね、と惜しみながら彼女と別れた。


本日の旅の宿はこちら。

ホテル季風クラブ知床
https://www.kifuu.com/

どのサイトでもレビューが抜群に良かったので2日目のホテルはこちらにしてみたところ、昨晩の飲み屋で地元民達からも「泊まりたい宿No. 1」とお墨付きだったので、とても期待していた。

実際に泊まった評価としては、これまで読んできたレビュー通りとても素晴らしい宿だった。
知床に行く人皆に勧めたいし、今後知床での常宿にしたい。

到着すると、とても穏やかでお上品な女将さんがお迎えして下さった。
物腰の柔らかさに心がほっとする。
なんと今日の宿泊客はわたし1人とのこと。ゆっくりお過ごしくださいねと言われたが、なんとも複雑な気持ちになる。
今回訪れた1月末は流氷にはまだ早く、オフシーズンらしいので仕方ないとは思う。
とはいえ悲しい。どうか繁盛してほしい…


明るい時間に撮れなかったが、外観はロッジのような雰囲気でとてもお洒落。あまり大きな建物ではなくこぢんまりしている。

本館の隣に別のロッジもあるので、家族やグループ旅行の場合はそちらでも楽しそう。

ロビーには本物の暖炉があり、その向かいにはテレビがあるので、暖炉にあたりながらぼんやり過ごすことも出来る。

宿のいたるところに梟がいた。
階段の手すりに居る木彫の梟がとてもお洒落。


階段を上がった先の2階ロビーには地元の方が作っている焼物や羅臼昆布などのお土産も。

壁には写真家が撮影した知床の羆の写真がたくさん。

味がある板(板?)

2階ロビーからの風景。正面にオホーツク海が見えてとても綺麗。


私が予約したのは和室で、1人には十分な広さ。

室内は新しいわけではないが、綺麗にされている。
もちろん部屋にはトイレとユニットバス付き。

ウェルカムお菓子が嬉しい

2階ロビーと同じ方向に窓があるので、部屋からも海が見える。窓を開ければ波の音が聞こえてきてとても穏やかな良い雰囲気。


部屋で少しゆっくりした後、午後からのガイドツアーの時間が来たのでロビーに降りる。
朝と同じツアー会社で冬の動物ウォッチングツアーを申し込みしていたので、午前中と同じガイドさんがこちらのホテルまでお迎えに来てくれた。


車に乗ってすぐ慌てた様子で「さっきキタキツネを見かけたから早く行きましょう」とのこと。
迎えに来る前にわざわざ下見をしてきて下さったらしい。それがお仕事とはいえ有り難かった。

先程キツネを見かけたという場所に到着すると、すぐに足跡を発見した。これがキツネの足跡!

周辺を見渡すと、いた!

道路脇の斜面を登るキツネ。
こちらをチラチラ見ながらさくさく登っていく。本物の野生のキタキツネである。
本当に居るんだ…と大感動。珍しくもないのかもしれないが、イヌ科の野生動物が歩いているというだけで犬狂いは大喜びしてしまうのだ。

見ているぞ

ガイドさんが高倍率の望遠鏡を持ってきてくれたので、設置してスマホをセットして撮影できた。
ちょうどいい場所を見つけたそうで、丸まって寝始めた。

かわいい…可愛すぎる……

望遠鏡のおかげでふかふかの毛皮が風に揺れる様もよく見える。
イヌ科なだけあってこう見ていると完全に犬……可愛い………

キツネはすっかり寝入ってしまったので、名残惜しいが次の場所に行くことにする。

すぐ近くにオスのエゾシカもいた。小さいツノが可愛い。

とてもいい天気!太陽が雪に反射してキラキラと美しい。

冬にこんなに晴れる日は珍しいとのこと。散策する日にこの天気とはなんという幸運。

海と雪と太陽。

波打ち際を見てるだけでも楽しい。

アザラシマークのゆるい看板が可愛い。

少し車を走らせて、今度はオオワシのいるスポットに到着。
スポットというより、道路脇の木の上に止まっているのをガイドさんが見つけたのだ。
運転しながらよく見つけられるなぁと感心する。

オオワシを発見!

かなり遠くから望遠鏡で見ないと分からない。
存在に気付かれるとすぐ逃げられてしまうので、少しずつじりじりと近付いていく。

かっこいい…この鋭い嘴よ。

完全にこっちを認識しているようす。

オオワシ絶滅危惧種に指定されている。
カムチャツカやサハリンで繁殖し、越冬しにオホーツク海周辺へ南下してくるらしい。
近いとはいえロシアからはるばる北海道に飛んできて冬を越すのは何故か?と聞いたら、厳冬期のロシアよりは過ごしやすく、繁殖地は餌も限られて生存競争も激しいので、豊富な餌を求めて決して楽ではない道のりを飛んででもこちらに来るとのこと。

その地に留まって競争相手と餌を取り合い生存競争をするか、死ぬ思いをしてでも餌の豊富な土地に渡って最終的に得をするか、広義で見れば人間社会のようだ。
すごいぞオオワシ。頑張れオオワシ

彼らのために私たちが出来ることは何だろうと考えた時、突き詰めるとやはり地球環境を考えて日々生きることなのだ。

調べたところ、越冬地まで70〜90日をかけて飛んでくるらしい。
リンクの資料が面白かったので興味があれば読んでみてほしい。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/pdfs/smp0903_04.pdf

オオワシの近くにはツノが立派なオスのエゾシカと隣には子供らしき個体も居た。

見てるねぇ


オオワシに近付きすぎて逃げられてしまったので、次の目的地へ移動。

エゾシカファーム

このエゾシカファームにいる鹿は食用だ。
捕獲されたエゾシカだったり、一度入ると出られないような構造になっている入口からのこのこと入ってきてしまった鹿たちが、ここで飼育されている。
エゾシカが異常繁殖していて、生態系に影響が出たり林業や酪農にも被害が出ているとのことで害獣扱いになっているので、せめてその命を頂くために食肉加工する施設らしい。

話を聞いた時は思わず可哀想!と声が出てしまったが、知床の自然のためにも、生物多様性の観点からも必要なことだ。

とはいえ気持ちに折り合いをつけるのはなかなか難しい。
人間として後ろめたい気持ちを抱きながら、群れる鹿を眺めた。


来た道を戻る途中、海に落ちる夕焼けがとても綺麗だったのでお願いして車を止めてもらい、海を眺める時間をもらった。

オホーツク海に流れ込む川。

海に流れ込む川というのは初めて見た。

この美しさが伝わるだろうか。

雲間からさす海に落ちる夕日。空の薄い青と雲の陰と陽の橙が混ざり合った色がとても綺麗だった。

写真では収まらなかったが、どこまでも続く水平線を見るだけで感動を覚えた。
私が住む地域から見える海は瀬戸内海なので、海の先には常に島が見える。
見渡す限りずっと水平線で、この海の向こうには大国のロシアがあるのだと思うとわくわくした。

海水浴はしないが海を見るのがとても好きなので、寒さすら感じずしばらく眺めていた。
穏やかではない波の音も、砂浜に積もった雪も、すべてが新鮮な海の姿だった。



熱いホットコーヒーでも飲みながらもうしばらく見ていたかったが、次もまだ行くところがあるので撤退した。

お次はガイドさん一押しのモモンガスポット。
キャンプ場のようなところに車を停めて、雪の山盛り積もった道なき道をゆく。
当然スノーブーツでもなく普通のブーツなので、隙間から雪が入り込みヒエヒエになりながら歩いた。

ガイドさんが休みの日に散策して見つけた、モモンガが住む穴をしばらくじっと見ていると、本当にモモンガがでてきた!

か、かわいい………
人生で初めて見るエゾモモンガ。可愛すぎる。

写真のままの体勢でしばらくじっと固まっていたので何をしているのか聞くと、暗闇の穴から外に出てきたので、明るさに目を慣らしているそう。
16:30頃で夕日もほとんど落ちている時間だったが、モモンガにはまだ明るいのだろう。
10分ぐらいはじっとしていた気がする。

もう1匹出てきた!

2匹縦に並んでじっとこっちを見ている(ような)姿がとても可愛い。なんとも言えない姿である。

結局この穴には4匹いたようで、ゾロゾロと出てきて隣の木に飛び立った。

丸をしているのが飛んでいるモモンガ。

モモンガの飛ぶ姿はなんだかイメージと違い、高速で落ちるように飛ぶ蛾のようだった。
隣の木に移ってご飯を食べるそう。

エゾモモンガは見れたらラッキーというぐらいらしいので、冬の知床で青空も見れたことだしこの旅はとても幸運だったと言えるのではなかろうか。


これで冬の動物ウォッチングツアーは終了。
14:30から2時間ほどだったが、とても濃くて充実した時間であった。

今回私が訪れたのは閑散期だったということもあって、午前午後ともにガイドツアーはマンツーマンとなった。
人見知りなので初めは緊張したが、自分とガイドさんの2人だけじゃなければ過ごせないような静かな時間があったり、気になったことはすぐに聞けたり、満足のいくまで海を眺めたり、自由にさせて頂けたので今思うととても幸運だった。

移動の車の中でも、動物園の存在意義や生き物を食べるために育て殺すことへの向き合い方など、ずっと1人で抱えていた自己矛盾を投げ掛けると、汲み取って同じ熱量で返してくれることがとても有り難かった。
人間が自然や動物に対して行う活動全てに理由をつけても、行き着くところは人間のエゴなのでは?という思いに辿り着いてしまう。
とはいえ私はヴィーガンではない。牛も豚も鳥も羊も大好きだし、魚だって生き物なのだから同じことだ。
そもそもヒトも食物連鎖の一員なので、過剰に負い目を感じることもおかしいのでは?と思うが、かといってこの地球の生態系を壊しているのは人間だ。
「命を有り難く頂くという思いを持つ」こともまた、そう思えば自己の行いが正当化されると人間が思っているだけなのでは?
…とこのような出口のないことを1人でいつも悶々と考えてしまう性格なのだ。

こんな話を普段他人とすることも無いので、人とこういう対話が出来たことがまたとても嬉しかった。
先方からしたら(何こいつ…)と思っているかもしれないが、自分以上に動物が好きで勉強されていて、その道を歩んでいる人と生き物に対する向き合い方の話が出来たのは、私にとっては大切なことだった。

結局のところ私の中での答えは出なかったが、それでいいんだろうと思う。この世の物事は全て白と黒で分けられるものではないのだ。
思考できる生き物である限りはこれからも考え続けることが大切だと思うので、いつか自分なりの答えが出る日が来たらいいな。
だからどうというわけでは無いのだが、生きる上でこの気持ちに折り合いをつけて生きたいのだ。



そう、朝からご一緒下さったこのツアーのガイドさんが良い人で、私が何歳でどこから来て普段どんな仕事をしているかなど一切聞いて来ない距離感がとても心地よかった。
美容院でのそういった他愛もない無駄話が嫌いなので、この地に来てまでそんな話をしなくていいことが嬉しかった。
私は些細なことも気になるタイプなので、あの木は何?あの柵はなんのため?なんでこうなっているのか?なんでそんな行動をするのか?と、少しでも気になった質問全てに必ず答えが返ってきたので心底感心した。
土地のことや動物のことをそれだけ勉強されているのだと思うが、自分の知らないことをポンポン教えてくれて、最短で最適解をくれるGoogle先生のようだった。

ガイドさんにも恵まれたお陰で、とても良い自然体験が出来た。本当にありがとうございました。


とてもとても楽しかった、また必ず来ます。とお話しして、ガイドさんにホテルまで送ってもらいお別れした。


次の記事で最後のはず!

現代人は電気羆の夢を見るか?知床1人旅-day2 ちっぽけな人間

6時間睡眠ののち、無事アラームで7時に起床。
知床2日目の始まりである。
とりあえずコンタクトだけ入れて寝起きのまま大浴場に向かう。

やはりというべきか、フロアには私以外は誰も居らず、浴場内も貸切であった。
他に誰もいないのでサッと写真を撮る。
素っ裸でスマホを構える姿はさぞ滑稽だろうと思う。

露天風呂からは小さな漁港が望める。

正直これは湯船に入るところが外から丸見えなのでは?と思うが、そもそも外に歩く人が全く居ないのであまり気にしないでおく。
朝の氷点下の気温の中、雪景色を見ながら入る風呂は格別だ。いつまでもぼんやりしていたいが、後のことを考えると所要時間は15分ほどしかない。
ほどほどにして、内湯に向かう。


内湯はガラス張りになっており、ここからも雪景色のウトロの街や、露天風呂からは見えなかった山も見える。
道路の前に見える建物は道の駅うとろ・シリエトクと知床世界遺産センターだ。
時間を気にせずもっとゆっくり入りたかった…

大浴場のフロアには休憩所もある。

朝食の時間になったのでレストランに向かう。
レストランの大きな窓からは右手にオロンコ岩が見えた。

いい景色。
オロンコ岩は高さ60mもある巨岩で、階段でテッペンまで登れるようになっており、頂上からはオホーツク海やウトロの街並みが一望できるそう。
時間が無くて行けなかったので、今度行った時は登ってみたい。

そして本日の朝食
朝から十分なボリューム。
ここでもふきの煮付けが出てきたが、もうふきを克服したので美味しく頂く。

満腹で部屋に戻ると、昨日は暗くて見えなかった部屋の窓からの景色がよく見えた。
大浴場やレストランからの眺めとあまり変わらないが、海が見える部屋というものは素晴らしい。
遠くの空に晴れ間が見え、今日の天気に期待が持てる。少しでも青空が見たい。


本日の予定はこの旅のメイン、午前は原生林トレッキング、午後は野生動物ウォッチングだ。
待ち合わせ時間の8:30にロビーに降りると、もうガイドさんの迎えが来ていた。
わたしのお願いしたネイチャーガイドは、ウトロ温泉地区のホテルであれば送迎してくれるのだ。

ホテルに荷物を預けてガイドの車に乗り込み、ひとまず事務所に向かい、そこでスキーウェアに着替えて長靴、手袋を貸してもらう。
ちなみに長靴・手袋・ニット帽は無料レンタル、スキーウェアは1000円で貸し出してくれる。
もちろん普段ウィンタースポーツなどしないのでスキーウェアなど持っておらず、貸して頂いた。

ここで冬の知床の装備について触れておきたい。
アクティビティの無い日はヒートテックインナー、裏起毛パーカー、ダウンコート、タイツ、裏起毛スウェットパンツ、厚手の靴下、ブーツ、マフラー で充分だった。
今日のようなアクティビティのある日は、ヒートテックインナー、Tシャツ、フリース、裏起毛レギンス、裏起毛スウェットパンツ、靴下2枚、その上にスキーウェア、肩甲骨と腹と腰に貼るカイロ
という装備で臨んだが、充分どころかトレッキングで3時間歩くと終わる頃には汗だくで暑すぎるぐらいだった。
特にフリース、暑すぎる!
裏起毛レギンスに裏起毛スウェットパンツにスキーウェアという下半身もモコモコで暑かったので、レギンスではなく普通のタイツでもよかったかもしれない。
この日は風が無くて穏やかな日だったので、恐らく風が強い日はもっと寒いとは思うが、2時間半山の中を歩き続けるとずっと寒いということは無いのでは…
とにかく脱ぎ着しやすい前開きの服装がおすすめ。


着替えを終え事務所からまた車に乗り、しばらく走った後に何もない道の路肩に止まる。
ここから原生林に入っていくと言うが、どう見ても道ではない。完全に道路の道端である。

ここでスノーシューというものを履く。

スノーシューとは西洋カンジキと言われていて、靴に着けると接地面積が増えることで体重が分散され、積もった雪の上も埋もれずに歩けるというものだ。
↓こういう昔に社会の授業で習ったような藁のカンジキの現代版という感じ

試しに普通の長靴で歩こうとすると、完全に足が埋まって進めない。
この器具ひとつで積もった雪の上もさくさく歩けるようになるものだからすごい。

ずんずんと歩き進めるが、道路からしばらくの間は原生林ではなく、人の手が加えられた森らしい。
北海道の開拓当時の人の住処だった場所に、後から人の手で木を植えているそうで、なるほど確かに木が等間隔に植わっている場所がある。

見慣れない白樺の木や動物の足跡がそこかしこにあり、それだけで胸が躍る。
人が歩いて出来た道を後から動物が歩いているらしき足跡もあった。

リスの足跡

人間の歩いた後を歩くテンの足跡

なんとこの森にはエゾクロテンも居るらしい。
絶対に会いたい!とガイドさんに宣言するも、テンはほとんど姿を見れることはないとのこと。
言葉通り、足跡は何度も見れど残念ながら姿は見ることが出来なかった…いつか見れますように。

しばらく歩き進むと、人の手を加えられてない原生林に入った。
ガイドさんの勧めで、荷物を置いて雪に倒れ込んでみる。
雪の下に何かが埋まっていて、倒れこんだ瞬間に身体に突き刺さって死ぬかも…といらぬ想像をしながら、思い切って後ろ向きに倒れ込む。


写真では全く伝わらないが、この光景が目に入った時の感動が忘れられない。
何の音もしない静謐な空気の中、いつまでもぼんやりと木々から覗く空を下から眺めていたかった。自分が地球の一部のように感じて、このまま雪に溶けたい…人間界に帰りたくない…と強く思った。雪の冷たさすら感じなかった。とてもとても心地良かった。

今回のガイドツアーは参加者がわたし1人で、なんとマンツーマンの道のりであったので、自分が言葉を発さず黙っていれば全く無音の空間になるというのも今思えばとても贅沢だった。
もう一度この光景が見たい。

日常生活で地面に寝転ぶなんてイベントは当然に起きないので、ただ転がっているだけで非日常を感じられてとてもよかった。
いつまでも寝転んでいたかったが、時間も限られているので歩き始める。

色んな動物が歩いていることがわかる。

これはキツツキの開けた穴。機械でもなく生き物がこんなに綺麗な形にくり抜くものなのか…と感動。

この下の方に埋まっている木は、一見人間の膝下ぐらいのサイズに見えるが、実は1メートル以上の大きさがある。雪で埋まっているだけなので、私たちは木の上を歩いている。実際の地面はこの遥か下なのだ。サイズ感がバグってしまう。

しばらく原生林を歩くと、遠くに海が見えてきた。

急に木々が無くなっているのは、地形的に海から吹き込む風が強くて木々が育たない場所らしい。
確かにこの場所だけ少し風が強かった。
林を抜けた先に見える海ってそれだけでなんだか感動的だ。

海の向こうに何も見えない。北海道の端っこに居るんだなと実感する。

また林の中に戻るとエゾシカに遭遇!初めて鳥以外の野生動物に会えた!

めっちゃ見てる。この耳につけられたタグは寿命などを行政に管理されてる子の印らしい。

ちびっ子もいる。

エゾシカたちはしばらくずっとこっちを見ていたのに、突然違う方向を向いて逃げるような姿勢になったので、あり得ないと思いつつもまさか羆かと思い焦った。
この時期は冬眠しているのでその可能性はほぼ無いが、秋だとあり得ないことでもないらしい。

ちなみに1番動物に遭遇出来るのは秋で、理由はどんぐりが豊富な時期だからとのこと。
動物みんな揃ってポリポリどんぐりを食べるのかと思うと可愛い。次は絶対に秋に来ることを決めた。その分羆との遭遇率も上がるのだが……


登り道が出てきたり、2時間以上歩き通しでこの辺りからかなり疲れてくる。
雪も降ってきて濡れた髪を軽く凍らせながらヒィヒィ歩いていると、また海が見えるところに出てきた。
ここもまたとても綺麗な場所だった。

青く凍っているのは「男の涙」と呼ばれる滝。
写真よりももう少し青くて、とても神秘的な光景だった。これは一生で一度は見たい景色だなと思う。

また登り道になり、そろそろ体力が尽きるぞ…と思いつつ根性で歩いていると、羆の爪痕を発見。


秋になるとこの木の上に山葡萄がなるので、それを獲るために木登りをするらしい。
本当にこの場所に羆が暮らしているんだなぁ。感慨深い。

その後15分ほど歩いて、最終地点に到着。
歩いたルートは恐らくこれ。

ニュアンスなので間違ってるかもしれないが、多分大体こんな感じ。
こう見るとすごい距離に見えるが、これで大体3時間弱程度。

文字にすると味気なくてこの感動を満足に伝えることが出来ないが、この経験は間違いなく私の人生で大きなものになった。
人間の手が及ばない、あるがままの自然に触れたことで、地球は人間だけのもので無いことを改めて再確認出来たことが嬉しくて堪らなかった。
人間以外の生物がこの地にそれぞれ暮らしている痕跡が見られただけで、何故かとてもホッとする気持ちになった。
雪の上に寝転がると、覆い被さるように視界に入る木々とそこから抜ける澄んだ空。
雪に吸音されて全ての音が消えたように完全に無音の世界。
森林を抜けた先に見えた海と雪景色のコントラスト。
何よりそこで出会った動物のリアルな息遣い。
全てが新鮮で、美しかった。そのひとつひとつに心が癒されていく実感があった。

流氷がプランクトンを運んできて、豊富な海洋資源が海の生き物を呼び寄せ、それらを求める動物が息づいており、それらを尊重し大切にする人間が暮らしている。
自然とヒトが、それぞれ地球上の生き物の中のひとつとして共生している。

今の自分が必要としていたものは、地球にとって人間がちっぽけな存在であると実感できるような、雄大な自然の姿を見ることだったのだ。
知床という土地が育む自然の雄大さに、今この時の自分の魂は救われた。

つらつらポエムを書いてしまったが、御託は抜きにして人生経験としてとても良いものであったので、この文章を読んでいる人達もいつか知床で原生林トレッキングにチャレンジしてみてほしい。
3時間ちょっと歩き続ける体力と、その間トイレに行けなくても大丈夫な膀胱の持ち主でなければならないが、歩いてみれば意外となんとかなるので皆に強くお勧めしたい。


最終地点に辿り着くと、ガイドさんの車に乗せてもらい、任意の場所まで送り届けてもらう。
私はそのまま昼食をとりたかったので、道の駅で下ろしてもらった。
ガイドさんはホテルに荷物を引き取りに行くのにも付き合ってくれ、道すがら辺りのおすすめの食事処も教えてくれ、とても親切な方で有り難かった。

とても充実した午前中を過ごし、2日目の午後に続く。

現代人は電気羆の夢を見るか?知床1人旅-day1 ウトロへの道のり編

網走監獄博物館を楽しみ、バスも定刻通り来たので無事に乗り込んで網走駅に向かう。
来た道を戻って10分ほどで網走駅に到着

網走駅の看板が縦書きなのには理由がある。

国鉄時代には、網走刑務所で刑期を終えた元受刑者のほとんどがこの網走駅から列車に乗って故郷等へ向かっていったので、網走の街を去る際に「この縦書き看板のように横道に逸れることなく真っ直ぐに歩んで生きていってほしい」との願いが込められているそう。いい話だな〜

網走駅の中には歴代の特急の看板らしきものが飾られていた。なんだかお洒落だ。

“おおとり”ときたら、わたくしの恋人こと鳳長太郎くん

キョロキョロしていたら写真を撮るのを忘れていて、残念ながら網走駅構内の写真がこれだけしかない。
目的地までの切符を券売機で買うという行為を何年振りかにして、待合室の椅子に座る。
次の電車まで1時間も無いというのに、電光掲示板の表示が無く真っ暗であったことがなんとなく引っ掛かり、念の為スマホで乗換案内を確認した。

ん?一部運休?
このあたりで心がザワザワし始める。
まさか、まさかな…と思いつつ、荷物整理などを始める。やっとる場合か。
現実逃避のように荷物の整理を終え、意を決して運行状態を調べ直す。運休してる…のか…?雪も降っていないのに?
信じたくない気持ちのまま立ち上がり、駅窓口を覗くも駅員さんが居ない。完全にテンパっているのでそのまま隣の建物にある観光案内所に向かい、窓口のお姉さんに問う。

「あの…ここって駅員さんって居ないんですか…」
「窓口に呼び出しベルが無かったですか?」

馬鹿なのか。気付けよ。お姉さんにお礼を言いつつまた隣の駅舎に戻る。
シティガールなので駅員が居ない駅窓口というものに馴染みがないことは許して欲しい。
呼び鈴を鳴らすとすぐ近くにいた駅員さんが出てきてくれたので、恐る恐る訪ねる。

「あの…もしかして知床斜里行きって運休ですか…」

頼む、勘違いであってくれ、何かの間違いであってくれ…この期に及んで受け入れられずにいた。

「はい、運休ですね」

あゝ無情。希望的観測に縋るその手をバサリと斬り捨てる駅員のお言葉。
とりあえずその場でついさっき購入したばかりの切符を払い戻してもらう。

知床斜里行きの電車って他にないですよね?」
「あ〜…18時台のやつは運行予定ですけど」

その時間の電車だとその先のバスに乗れない。それだと意味がないのだ。

「じゃあ、それ以外だともうタクシーしか…ないですかね…」
「そうですねぇ」

タクシー。口にしたくなかった言葉。恐れていた事が現実になってしまった。
しょぼしょぼと萎れた気持ちのまま、また隣の観光案内所に向かう。お姉さんの笑顔に幾分ほっとする。

知床斜里まで行きたいんですけど、電車が無ければタクシーしかないですよね?」

いえいえバスがありますよ、という情報を与えてくれないかという希望を込めて確認してみるが、やはり選択肢はタクシーしか無かった。
網走駅16:17発の釧網本線に乗り知床斜里まで行き、そこから18時発のバスで目的地であるウトロ温泉まで移動する予定だったのだ。
電車が運休となったことで、網走から知床斜里間はタクシーでの移動が決定した。
観光案内所のお姉さんが知床斜里までのタクシー料金を調べてくれたところ、なんと13000円。い、いちまん…
電車だと970円である。実に14倍になってしまった。北海道のタクシーは冬季料金というものがあり、2割増しになっているのでこの値段ということだった。
冬季料金!そういうのもあるのか……これには井之頭五郎も意気消沈である。

しかし背に腹は変えられない。移動しないわけにはいかないのだ。タクシーを呼んでもらい、待つ間にお姉さんと談笑する。
聞けば、この釧網本線は赤字路線のため、ちょっとしたことで運休になるらしい。乗客がフルで乗っても赤字になる路線の話を聞くともう何も言えない。
まぁ運休になったことで私のような乗客を逃しているのだが、その分はタクシー会社に支払うことで網走に還元出来ると思えばよいのだ。そう、この旅は訪れた土地に観光客として大いにお金を落とすことが目的。これでいいのだ…
そう己に言い聞かせながら悔し涙を堪える。

タクシーを待つ間に、観光案内所でニポポのキーホルダーやポストカードを購入。

ゴールデンカムイの読者ならご存知かと思うが、作中で白石が木彫りのチン…の御守りを流氷に突き立てて命拾いしていたことを思い出し、もしかしたら私も同じように御守りに命を助けられる場面が来るかもしれない、と思い至り購入した。
この旅では御守りを流氷に突き立てて命拾いするというシーンは無くて良かった。これもニポポの御加護だろう。

タクシーのお迎えが来たので、窓口のお姉さんに御礼を言って別れる。
とても気さくで話しやすく、運休の知らせに凍り付いた心が溶かされるような気持ちだった。網走の人の暖かさに触れる。お姉さんありがとうさようなら。

タクシーの運転手さんも人柄が良く、地元のファッキン運転手との違いにホッとしながら知床斜里への道を行く。
車窓からはオホーツク海が見えた。

50分ほどで知床斜里バスターミナルに到着した。
ちなみにこのタクシーはカードが使えなかったので現金払いだったのだが、やはり地方の旅は多めに現金を持っておくに越したことはない、とキャッシュレス女は身を持って知るのであった。

知床斜里に到着したものの、ウトロ温泉行きのバスまで1時間以上ある。
しばらく待合室でぼんやりした後、近くのセイコーマートに行くことにした。
セイコーマートは北海道オリジナルのコンビニである。

こんなもん人も車も通っていい道ではない。完全に氷上だ。それも氷に水をかけて更に凍らせたやつ。

セイコーマートに行く前に地元のパン屋を見つけたので寄り道をする。パン大好きっ子としては見逃せない。


3つほど買い込み、セイコーマートに足を向ける。
数歩歩いたところで、前触れもなくすっ転んだ。
そもそも転ぶのに前触れなんてものはないのかもしれないが、滑るとは思わないところでつるりと滑って綺麗に尻餅をついた。瞬間、自分でも驚きの反射神経ですぐに立ち上がったのだが、右手薬指をキャリーの持ち手と地面に挟まれ強打して負傷した。
尻も痛いが何より指が痛い。折れてたらどうしよう、と大袈裟に思いながら、めげずにセイコーマートへ足を進める。
試される大地の洗礼を受けたな…フフ……と1人笑いながら無事にセイコーマートへ到着した。

地方のコンビニというものは何故か心躍る。
ホットスナックの唐揚げに惹かれながらも、ホットカフェラテだけ購入してバスターミナルへ戻った。
セイコーマートのカフェラテは美味しかった。

しかしこのバスターミナル、乗客が居ない。さっきから自分以外の客の姿が無いことに不安に駆られる。
先程の運休事件があったことで猜疑心に満ちた私は、このバスもまさか運休なんてことはなかろうな、と案内板を見るがどこを見ても運休なんて文字はない。
不安を抱えながら先程買ったカフェラテを片手にチョコレートマフィンを食べていると、1人だけ乗客らしき女性が入ってきて安心する。

時間になるときちんとバスが来たので、そそくさと乗車しやっと人心地がついた。
これであとは終点まで乗ればホテルのあるウトロ温泉に到着するのだ。
まだ18時だというのに、深夜に知らない土地に1人ぼっちかのような漠然とした焦燥感があった。

1時間ほどバスに揺られ、ウトロ温泉バスターミナルへ到着。
無事辿り着き喜び勇んでバスを降りると、誰も居ない。車も居ない。19時前だというのに、深夜の街のような静謐さにヒヤリとする。
外出禁止令でも出ているのかという人気のなさ。
Googleマップで近くのホテルに向かうが、素人には雪で歩道と車道の区別がつかない。


犬の足跡に思わずニンマリとする。
足跡だけで人の心を温かくする、パーフェクトアニマルこと犬よ。

バスターミナルからほど近いホテルに到着。
1日目の宿は「知床ノーブルホテル」である。

http://www.shiretoko-noblehotel.com/index.html

部屋はこんな感じ。1人でもツイン部屋で広々。

全室バルコニー付きで、私は海側を予約したのでオーシャンビュー。

外は真っ暗でほとんど見えないが、窓が開いて小さなベランダに出れるようになっている。これは解放感があってとても嬉しい。

外観を撮るのをすっかり忘れていたので、公式HPの写真より。

このように全室バルコニー付きで、恐らく反対側の山側の部屋も同じようになっているのだろう。
バルコニー付きのホテルが好きなので、これがこのホテルに泊まる決め手になった。

バストイレ別なのも嬉しい

アメニティも充実


ホテルにしてはテレビもかなり大きめ

室内に電子レンジまで完備してあった

チェックイン時に言われて思い出したのだが、夜と朝にお弁当付きのプランを予約していた。
このご時世もあり、食事はレストランじゃなく部屋食出来るお弁当にしているので少し安いよというプランだった。
夜ご飯のことはすっかり忘れていたので得した気分になる。
朝食もお弁当ではあるがジュース等飲み物もあるので、朝はレストランに来てくれと言われた。
「本当、ガラッガラなので(レストランに来ても)大丈夫です」と言うホテルマンの笑みが切ない。
1人ぐらいが泊まっても大した足しにはならないだろうが、この旅にも意義はあったのだ。

チェックイン時に指定した時間になると、お弁当を部屋まで持ってきてくれた。
お弁当という響きから、軽食程度だろうと失礼ながら完全に期待していなかったのだが、想像を超えたボリュームのお弁当が来た。

左から、エビチリ 海老フライ 唐揚げ 焼売 かぼちゃサラダ 何かのクリームチーズ和え アワビと海藻の和物
ご飯 モンブラン りんごの大福 刺身(イカ・サーモン・鯖)
茶碗蒸し お吸い物 お漬物

弁当のレベルを越えていた。
もちろんあたたかく、どれも美味しい。
普段食べないものに対して知見がないので、クリームチーズと和えられているコリコリしたものが何かは分からなかった。分からないが、美味い。

大満足で食事を終え、入れ物は廊下に置いてある配膳台に乗せておいて下さいと言われていたので、弁当箱を持って部屋を出た。
ここで私が犯した過ちが分かるだろうか。
何も考えず、そのまま部屋を出たのだ。
弁当箱を置いて振り返り、ドアノブに手を掛けたところで気づく。

ああ、オートロック…

とりあえず服はまともに着ていて良かったと心底安心しつつ、1人笑いながらフロントに向かいヘラヘラと事情を説明した。
同じ過ちを犯す人は割と居るらしい。ありがちな罠だったのだ。
いやしかし、服を着ていて本当に良かった…と改めて胸を撫で下ろした。
自宅であれば着ていたトップスを脱いでヒートテック1枚で過ごすということもままあるので、その格好だと人前に出られないところであった。
みんな、ホテルでは室内でも服を着ておこう。

美味しい食事で満たされ、30分ほどテレビを眺めたりした後、次の目的地に向かうことにした。
食事は終えたものの行きたいところがあったのだ。

それがこちら。

知床酒場 ピリカデリック
〒099-4355 北海道斜里郡斜里町ウトロ東220
https://goo.gl/maps/XeM1vDYB2pHkLwvD9

周辺の食事処を探していた時に見つけたバーで、Googleマップの口コミがやたらと良いので行ってみようと思っていたのだ。
酒呑みではあるが普段1人で外に飲みに行くことはしない自分も、旅先では行動的になるのだ。
数年ぶりかに1人でバーに入ると、こぢんまりした店内には男性客が2人と女性のバーテンダーさんがいた。
店内もお洒落で、アットホームな雰囲気を纏っていた。

カウンターに座り、おすすめのにんじんビールとアテに鮭とばを頼む。
酒なんぞで太るのが嫌なので普段はビールを飲むことはほとんど無いのだが、このにんじんビールはとても飲みやすかった。
鮭とばも初めて食べたが、噛みごたえがあってなるほどいい酒のアテである。

1人で来店しても1人にならないのがこのバーのいいところなのか、地元漁師のおじさん2人とバーテンのお姉さんと会話しつつ呑んでいると、私と同年代ぐらいの女性が1人入ってきた。
彼女はバーテンとも顔馴染みのようで、同席した私も一緒に話を聞いていると、これからしばらく知床で働くために今日こちらに到着したらしい。
さまざまな観光地の繁忙期にだけスタッフとして働いて、また季節が変われば次の土地に行って…と日本各地を転々と移動して働いていると聞いてとても驚いた。
観光地のガイド手伝いやゲストハウスのスタッフ、山小屋のスタッフ、みかん農家の手伝いなど、その仕事内容は多岐に渡る。
基本的には観光関連の仕事をしているとのことで、知床にも冬季の観光客向けのアクティビティガイドとして働きに来たという。

まず、そんな世界があることに驚いた。
観光地のスタッフは皆現地の人だと思っていたからだ。まさか日本各地から集まって来た人達だとは思わなかった。
数ヶ月働き、繁忙期が終わればまた違う土地に向かう。北海道の島から静岡の山小屋まで、働く場所は多岐に渡る。
まとまったお金が入れば海外に1か月旅に出る。そういう暮らしをここ3年ほどしているらしい。
なんと夢のあることであろうか。わたしは甚く感銘を受けた。そしてバイタリティ溢れる彼女を心の底から尊敬した。

彼女の話を前のめりに聞きながら、チョコレートタルトも追加で注文した。美味しい。


人の人生の話を聞くのがとても好きなので、彼女に質問したり感心したりなどしつつ、漁師のおじさんに一杯奢ってもらったりなどしつつ、地元漁師とここ数年参入した観光業との隠れた軋轢の話を聞いたりなどしつつ、楽しく過ごしていると23時を過ぎてしまった。

まずい。ホテルの露天風呂は24時までだ。露天風呂と大浴場に入りたくてこのホテルにしたのに、逃すわけにはいかない。
「そろそろ帰ります」がこの世で一番言い出しにくい台詞でありながらも、勇気を出してお暇する。
1時間ぐらい飲んで帰るつもりが、結局3時間以上滞在してしまった。
自己評価としては人とのコミュニケーションが苦手な内向的な私が、旅先で1人バーに入り現地の人達と楽しい時間を過ごしたということは非常に喜ばしいことだった。
己にもそういう時間を過ごす能力があるのだ、と嬉しくなる。

流れで同年代の彼女とも連絡先を交換し、旅先で知り合いが出来る嬉しさに心躍らせながら、足取り軽くホテルへの道を戻った。
徒歩2分程度なので人気のない夜道も安心。
そういえば翌日のガイドさんは、ここでは不審者に出会うよりヒグマに出会うことの方が多いと言っていたな。

露天風呂が閉まる前にホテルに帰ったものの、深夜誰も居ない大浴場に1人で入る勇気はなかった。
カルトやホラー映画が好きでも自分ごととなると人並みに恐怖は感じるのだ。

露天風呂は朝食前に入ることとして、部屋のユニットバスでサッと入浴し、明日に備えて寝ることにした。
翌日は7時には起きて朝から大浴場に行き、ご飯を食べて8:30までには荷物をまとめて支度を終えるというミッションがある。
休日の朝7時に起床するという高いハードルを越えることができるのか?

明日の日を夢に見て、網走の夜に抱かれるのであった…

現代人は電気羆の夢を見るか?知床1人旅-day1 網走監獄編

2022年1月22日、旅立ちの日である。
コロナ前までは多い時は毎週末に関西空港に通うという生活をしていたこともあったが、元々国際線以外では利用することも無く、なんとほぼ丸2年ぶりの関西空港
ピーチは第二ターミナルなので元々人が多くないターミナルではあるが、完全に閉鎖された国際線側を見ると少し悲しくなる。

こちら今回の旅のお供…と言いつつ、1日目以降は全く出番が無かったな。
せっかくの金カム聖地巡礼なので、お気に入りのキラキラハート愛です缶バッジをリュックに付けて。
金カムを知らない人はおじさんの絵柄のハート形缶バッジを見てどう思うのだろうか。

そして定刻通りの搭乗、離陸、着陸。
この時期の雪国へのフライトは降雪での遅延や運休が怖いところだが、幸い行き帰りどちらも定刻通りの運行で運が良かった。いや悪くなかったというべきか。

2時間のフライト後、女満別空港に到着!

雪だ!!!!!!!!
雪の降らない近畿地方在住民、降り立って即雪景色に大興奮。
恐らく北海道は2016年の11月に行った札幌ぶりなので、実に5年ぶり。感動もひとしおである。

写真右に写っているのが私が乗る空港から網走市街地までのバス。
地方空港あるあるなのかはわからないが、この空港バスは目安としての時刻表は存在するものの、到着する飛行機と接続しており、飛行機から降りて荷物をピックしたバスに乗りたい乗客がみんな乗り終わるまでは時間になっても出発しないというアバウトさが面白かった。
結局時刻表記載の時刻から10分程度遅延して出発。

車窓からの景色は真っ白で、だだっ広く何もない土地がどこまでも広がっているこの光景だけで、北海道に来たことを実感できる。
大人なので車内では真顔でツイッターをしていたが、内心はもう嬉しさで叫び出しそうなぐらい興奮していた。
北海道、冬の北海道に降り立ったのだ。恋に恋焦がれ恋に泣く北海道に。

なんと北海道のバスは運賃の支払いにPayPay等の各種スマホ決済が利用できるらしい。
これは便利で羨ましい!と思ったが、そういえばICカードの読み取り部が無かったような。
ICカードが無いからスマホ決済なのだろうか。
一見便利なように思えたが、降車時に運転手さんに支払い画面を見せるのに何故かわりとみんなモタモタしてたので、利用者の少ない地方じゃないと乗客がピリピリして仕方ないのでは。


車窓から見えた味のあるボウリング場

空港を出て最初の目的地は博物館網走監獄。
網走監獄へのアクセスは通常“天都山入口”バス停降車後徒歩15分だが、15分もキャリーを引きずってこの雪道を歩けるわけがない。途中で疲れ果てて凍死するに決まっている。
しかし事前に調べた私は知っている。ちょうど2日前の1月20日から3月末まで、冬期の観光客向けに「観光施設めぐり」バスが運行していることを。
このバスなら網走監獄博物館の目の前まで行けるのだ。安心安全の徒歩0分。

この観光バスは網走市内を巡るものなので、空港からのバスで一旦“網走バスターミナル”に向かい、そこから網走監獄行きの観光バスへ乗り換える。
この乗り換え時間にあまり余裕がないので、空港バスのスタートが10分遅れたことで無事に乗り換えが出来るのかハラハラしながらも網走バスターミナルに到着。乗り換え時間にも5分ほど余裕ありで安心。

あらいいですね。この新しくない感じの地方のバス待合室。わくわくしますね。


キョロキョロしていたら観光バスは3番乗り場だと親切に教えてもらったので、待合室に入らず外で雪を触って数分で来るバスを待つ。

バスに揺られて数分、網走監獄博物館に到着!

着いてすぐ短い橋がある。鏡橋というらしい。
「川面に我が身を映し、襟を正し、心の垢をぬぐいおとす目的で岸に渡るように」と、誰とはなしに鏡橋と呼ばれるようになったそう。

来たぜ!網走監獄!

女満別空港着が12時、網走監獄博物館に着いたのが13:30ごろなので、入場前に監獄食堂で昼食をとる。

ここは網走刑務所のメニューを再現した監獄食や美味しそうなザンギ丼などが食べられる食事処。
閉めずに営業しててくれて助かった!


食堂に置いてある漫画にはもちろんゴールデンカムイも。


パンフレットと入場券。
割引と書いてあるのは、公式HPの割引クーポンを見せると入場料が10%オフになるからで、割引無しだと大人1100円也。


私は監獄食Bのホッケをチョイス。
付け合わせのおかずはフキと油揚げの煮物と長芋、ご飯は麦混じり。
これがすんごく美味しかった!ぷりぷりのホッケ!
せっかく監獄に来たとはいえ間違いなく美味しいものが食べたいので、ザンギ丼あたりを食べるつもりが、いざ来ると「せっかくだから監獄食にするか」という気持ちになり、苦手なフキの煮物がある監獄食Bにしたのだが、なんと嫌いだったはずのフキの煮物も美味しく食べられて感動。
フキのことは小学校の給食で食べて以来クサくて(においがくさいと草っぽいの意)大嫌いだったのに、大人になってから食べると美味しいじゃないか。いや、これは同じフキなのか?フキって何?お前…あのフキか?

フキの煮物はホテルのご飯でも2日とも出てきたので、北海道ではよく食べるものなのかもしれない。
くたくたに煮つけてあったのでフキのシャキシャキ感が感じられなかったのがよかったのか、米粒ひとつ残さず完食。

きちんとカロリー管理されているらしい。

さて、いざ網走監獄に入所。
門の横に立つ看守は人形だと知ってても実際見ると人間っぽくてビビる。

重要文化財のひとつ、庁舎。

これがすごい綺麗な建物だった!
グレーとシャーベットブルーの色味が完全に氷帝学園。こんな色味の家に住みたい。

庁舎の中には網走監獄や囚人が開拓した北海道の歴史の展示が。

「もともと彼らは暴戻の悪徒であって、尋常の工夫では耐えられぬ苦役に充て、これにより斃れても、監獄費の支出が減るわけで、万やむを得ざるなり」

つまり、「元々とんでもない悪党だし、普通の人じゃ耐えられないような仕事を充てがって、それで死んでも監獄費の支出が減るんだからしょうがないよね」ってことだろうか。
ひ、ひでぇ…そういう時代背景にしても非道だ。

しかしこの博物館はそれを肯定するわけではなく、生きるのも厳しい環境で沢山の犠牲者を出しながら、この北海道という土地は囚人によって開拓されてきたことを知ってほしい、ということをきちんと伝えていた。

庁舎にも金カムのポスターがたくさん。

白石ィ!この白石スタンプ欲しい

庁舎を入って左手が展示で、右手はお土産や軽食ブースになっていた。

門倉部長のグッズあるじゃん!
ここでとりあえず金カムの食べ物系土産を購入。

煉瓦造りの独居房

さ、寒そ〜…もちろん暖房なんか無いんでしょう。死ぬど。

さて、網走監獄で1番楽しみにしていたところ、放射状舎房!

うおおおおおおおおおおおこれは門倉部長がお茶碗を割ったりしていた中央見張所!宇佐美が門倉部長を見つけた「門倉部長殿ぉ!?お久しぶりでーす」の場所!これぞまさに聖地巡礼

公式HPより。
外観はこのような美しい建物。

見張所の中はこんな感じ。門倉部長が隠れてた机の下。

真っ直ぐ続く舎房

懲罰執行中の人
ご飯を食べる人たち

舎房内の暖房も薪から石炭、石油、スチームと変化していったらしい。
廊下の暖房だけで網走の厳しい冬を越えるのはキッツい。

看守の人形がどことなく鯉登っぽい

備品管理もきちんと

第1、第3の舎房の廊下側の壁は斜め格子になっている。これがすごいのが、真ん中に立って左右にある部屋を監視する看守からは格子の隙間から部屋の中の様子が見えるが、収容者の居る部屋からは向かい側にある部屋の中は見えないようになっていた。
格子状なので暖房や換気面でも有効で、よく考えたなぁと感心。

金カム白石のモデルになった白鳥由栄の脱獄術の紹介ブースもあった。

毎日ネジにみそ汁かけて塩分で腐らせて外したらしい。発想もすごいし、思いついたにしても本当に上手く行くもんなんだな…人間やろうと思えばなんでも出来るのだ。
本物の脱獄王は白石と違ってパワー系だった様子。

監獄歴史館では中央道路の開削工事をテーマにした展示がたくさん。

「地獄のような突貫工事」ってやっぱ突貫工事だったんかい!
700メートルに1人亡くなるという計算で犠牲者が出ていたらしい…
囚人の着ていた服や足につけるような重りなども展示されていた。
ここは時間が無くて軽くしか見られなかったので、もっとじっくり見たかった。次回に期待。

ここは重要文化財の“旧網走刑務所 二見ヶ岡刑務支所”の中。

雪掻きされた歩道

ここは刑務所の裏門。煉瓦造りでお洒落。

笑っちゃうぐらい雪がこんもり積もったニポポ

こう見えても守り神のニポポ。どんな願いでも叶えて幸せになるという意味の名前らしい。とりあえず拝んでおく。
ニポポはお土産屋さんや観光案内所にも売っていた。網走の民芸品として受刑者が手作りしているそう。

重要文化財教誨堂。
教誨堂とは、僧侶や牧師さんが受刑者に人の道を説いた場所。受刑者は特に精魂を込めて建てたそう。

ここは金カムで土方と犬童が戦ったところだったり、白石がシスターと対面したところだったり。



建物の外見からは想像出来ない美しい内装。白とブルーグリーンが基調の可愛い色合い。
左手には受刑者の描いた絵や書などの展示があり、正面の仏壇前にはお賽銭箱が。心付けは犯罪被害救援基金や網走刑務所の収容者矯正のための図書費に寄付されるとのことなので、少しばかりチャリンと。両替に手数料が掛からない額で(時事ネタ)

歩道の手摺りの位置で積雪量がよく分かる。

15時にはもう夕方頃のような顔を見せる太陽。
知床の冬は日の出も日の入りも早いのだ。

そろそろ帰りのバスの時間になるので、外のお土産屋さんでお菓子や網走マグネットなどを購入してバスを待つ。

雪に刺さる鶴見中尉のアクスタは売店で購入したもの。
手に取った鶴見中尉を見た店員のお姉様に「渋いですね」と言われて「ヘヘッ…w」としか返せなかった自分に自己嫌悪しながらバスを待つ。

さて、バスも定刻通り来たので、博物館網走監獄を後にする。

博物館網走監獄は建築物の美しさや当時の刑務所の様子を伝えるだけではなく、北海道の開拓の歴史は囚人たち無しには語れず、文字通り命懸けの労働とたくさんの犠牲者を礎に現在のこの北の大地があることを、当時を知らない後世の者たちに伝えたいという思いをひしひしと感じる、とても良い博物館だった。
網走に行った際は是非に。
特に金カム好きな人は人生で一度行ってみるととても楽しめますぞ。

網走からの移動はまた次の記事に続く。