犬生の気高さよ

君を忘れない

現代人は電気羆の夢を見るか?知床1人旅-day1 網走監獄編

2022年1月22日、旅立ちの日である。
コロナ前までは多い時は毎週末に関西空港に通うという生活をしていたこともあったが、元々国際線以外では利用することも無く、なんとほぼ丸2年ぶりの関西空港
ピーチは第二ターミナルなので元々人が多くないターミナルではあるが、完全に閉鎖された国際線側を見ると少し悲しくなる。

こちら今回の旅のお供…と言いつつ、1日目以降は全く出番が無かったな。
せっかくの金カム聖地巡礼なので、お気に入りのキラキラハート愛です缶バッジをリュックに付けて。
金カムを知らない人はおじさんの絵柄のハート形缶バッジを見てどう思うのだろうか。

そして定刻通りの搭乗、離陸、着陸。
この時期の雪国へのフライトは降雪での遅延や運休が怖いところだが、幸い行き帰りどちらも定刻通りの運行で運が良かった。いや悪くなかったというべきか。

2時間のフライト後、女満別空港に到着!

雪だ!!!!!!!!
雪の降らない近畿地方在住民、降り立って即雪景色に大興奮。
恐らく北海道は2016年の11月に行った札幌ぶりなので、実に5年ぶり。感動もひとしおである。

写真右に写っているのが私が乗る空港から網走市街地までのバス。
地方空港あるあるなのかはわからないが、この空港バスは目安としての時刻表は存在するものの、到着する飛行機と接続しており、飛行機から降りて荷物をピックしたバスに乗りたい乗客がみんな乗り終わるまでは時間になっても出発しないというアバウトさが面白かった。
結局時刻表記載の時刻から10分程度遅延して出発。

車窓からの景色は真っ白で、だだっ広く何もない土地がどこまでも広がっているこの光景だけで、北海道に来たことを実感できる。
大人なので車内では真顔でツイッターをしていたが、内心はもう嬉しさで叫び出しそうなぐらい興奮していた。
北海道、冬の北海道に降り立ったのだ。恋に恋焦がれ恋に泣く北海道に。

なんと北海道のバスは運賃の支払いにPayPay等の各種スマホ決済が利用できるらしい。
これは便利で羨ましい!と思ったが、そういえばICカードの読み取り部が無かったような。
ICカードが無いからスマホ決済なのだろうか。
一見便利なように思えたが、降車時に運転手さんに支払い画面を見せるのに何故かわりとみんなモタモタしてたので、利用者の少ない地方じゃないと乗客がピリピリして仕方ないのでは。


車窓から見えた味のあるボウリング場

空港を出て最初の目的地は博物館網走監獄。
網走監獄へのアクセスは通常“天都山入口”バス停降車後徒歩15分だが、15分もキャリーを引きずってこの雪道を歩けるわけがない。途中で疲れ果てて凍死するに決まっている。
しかし事前に調べた私は知っている。ちょうど2日前の1月20日から3月末まで、冬期の観光客向けに「観光施設めぐり」バスが運行していることを。
このバスなら網走監獄博物館の目の前まで行けるのだ。安心安全の徒歩0分。

この観光バスは網走市内を巡るものなので、空港からのバスで一旦“網走バスターミナル”に向かい、そこから網走監獄行きの観光バスへ乗り換える。
この乗り換え時間にあまり余裕がないので、空港バスのスタートが10分遅れたことで無事に乗り換えが出来るのかハラハラしながらも網走バスターミナルに到着。乗り換え時間にも5分ほど余裕ありで安心。

あらいいですね。この新しくない感じの地方のバス待合室。わくわくしますね。


キョロキョロしていたら観光バスは3番乗り場だと親切に教えてもらったので、待合室に入らず外で雪を触って数分で来るバスを待つ。

バスに揺られて数分、網走監獄博物館に到着!

着いてすぐ短い橋がある。鏡橋というらしい。
「川面に我が身を映し、襟を正し、心の垢をぬぐいおとす目的で岸に渡るように」と、誰とはなしに鏡橋と呼ばれるようになったそう。

来たぜ!網走監獄!

女満別空港着が12時、網走監獄博物館に着いたのが13:30ごろなので、入場前に監獄食堂で昼食をとる。

ここは網走刑務所のメニューを再現した監獄食や美味しそうなザンギ丼などが食べられる食事処。
閉めずに営業しててくれて助かった!


食堂に置いてある漫画にはもちろんゴールデンカムイも。


パンフレットと入場券。
割引と書いてあるのは、公式HPの割引クーポンを見せると入場料が10%オフになるからで、割引無しだと大人1100円也。


私は監獄食Bのホッケをチョイス。
付け合わせのおかずはフキと油揚げの煮物と長芋、ご飯は麦混じり。
これがすんごく美味しかった!ぷりぷりのホッケ!
せっかく監獄に来たとはいえ間違いなく美味しいものが食べたいので、ザンギ丼あたりを食べるつもりが、いざ来ると「せっかくだから監獄食にするか」という気持ちになり、苦手なフキの煮物がある監獄食Bにしたのだが、なんと嫌いだったはずのフキの煮物も美味しく食べられて感動。
フキのことは小学校の給食で食べて以来クサくて(においがくさいと草っぽいの意)大嫌いだったのに、大人になってから食べると美味しいじゃないか。いや、これは同じフキなのか?フキって何?お前…あのフキか?

フキの煮物はホテルのご飯でも2日とも出てきたので、北海道ではよく食べるものなのかもしれない。
くたくたに煮つけてあったのでフキのシャキシャキ感が感じられなかったのがよかったのか、米粒ひとつ残さず完食。

きちんとカロリー管理されているらしい。

さて、いざ網走監獄に入所。
門の横に立つ看守は人形だと知ってても実際見ると人間っぽくてビビる。

重要文化財のひとつ、庁舎。

これがすごい綺麗な建物だった!
グレーとシャーベットブルーの色味が完全に氷帝学園。こんな色味の家に住みたい。

庁舎の中には網走監獄や囚人が開拓した北海道の歴史の展示が。

「もともと彼らは暴戻の悪徒であって、尋常の工夫では耐えられぬ苦役に充て、これにより斃れても、監獄費の支出が減るわけで、万やむを得ざるなり」

つまり、「元々とんでもない悪党だし、普通の人じゃ耐えられないような仕事を充てがって、それで死んでも監獄費の支出が減るんだからしょうがないよね」ってことだろうか。
ひ、ひでぇ…そういう時代背景にしても非道だ。

しかしこの博物館はそれを肯定するわけではなく、生きるのも厳しい環境で沢山の犠牲者を出しながら、この北海道という土地は囚人によって開拓されてきたことを知ってほしい、ということをきちんと伝えていた。

庁舎にも金カムのポスターがたくさん。

白石ィ!この白石スタンプ欲しい

庁舎を入って左手が展示で、右手はお土産や軽食ブースになっていた。

門倉部長のグッズあるじゃん!
ここでとりあえず金カムの食べ物系土産を購入。

煉瓦造りの独居房

さ、寒そ〜…もちろん暖房なんか無いんでしょう。死ぬど。

さて、網走監獄で1番楽しみにしていたところ、放射状舎房!

うおおおおおおおおおおおこれは門倉部長がお茶碗を割ったりしていた中央見張所!宇佐美が門倉部長を見つけた「門倉部長殿ぉ!?お久しぶりでーす」の場所!これぞまさに聖地巡礼

公式HPより。
外観はこのような美しい建物。

見張所の中はこんな感じ。門倉部長が隠れてた机の下。

真っ直ぐ続く舎房

懲罰執行中の人
ご飯を食べる人たち

舎房内の暖房も薪から石炭、石油、スチームと変化していったらしい。
廊下の暖房だけで網走の厳しい冬を越えるのはキッツい。

看守の人形がどことなく鯉登っぽい

備品管理もきちんと

第1、第3の舎房の廊下側の壁は斜め格子になっている。これがすごいのが、真ん中に立って左右にある部屋を監視する看守からは格子の隙間から部屋の中の様子が見えるが、収容者の居る部屋からは向かい側にある部屋の中は見えないようになっていた。
格子状なので暖房や換気面でも有効で、よく考えたなぁと感心。

金カム白石のモデルになった白鳥由栄の脱獄術の紹介ブースもあった。

毎日ネジにみそ汁かけて塩分で腐らせて外したらしい。発想もすごいし、思いついたにしても本当に上手く行くもんなんだな…人間やろうと思えばなんでも出来るのだ。
本物の脱獄王は白石と違ってパワー系だった様子。

監獄歴史館では中央道路の開削工事をテーマにした展示がたくさん。

「地獄のような突貫工事」ってやっぱ突貫工事だったんかい!
700メートルに1人亡くなるという計算で犠牲者が出ていたらしい…
囚人の着ていた服や足につけるような重りなども展示されていた。
ここは時間が無くて軽くしか見られなかったので、もっとじっくり見たかった。次回に期待。

ここは重要文化財の“旧網走刑務所 二見ヶ岡刑務支所”の中。

雪掻きされた歩道

ここは刑務所の裏門。煉瓦造りでお洒落。

笑っちゃうぐらい雪がこんもり積もったニポポ

こう見えても守り神のニポポ。どんな願いでも叶えて幸せになるという意味の名前らしい。とりあえず拝んでおく。
ニポポはお土産屋さんや観光案内所にも売っていた。網走の民芸品として受刑者が手作りしているそう。

重要文化財教誨堂。
教誨堂とは、僧侶や牧師さんが受刑者に人の道を説いた場所。受刑者は特に精魂を込めて建てたそう。

ここは金カムで土方と犬童が戦ったところだったり、白石がシスターと対面したところだったり。



建物の外見からは想像出来ない美しい内装。白とブルーグリーンが基調の可愛い色合い。
左手には受刑者の描いた絵や書などの展示があり、正面の仏壇前にはお賽銭箱が。心付けは犯罪被害救援基金や網走刑務所の収容者矯正のための図書費に寄付されるとのことなので、少しばかりチャリンと。両替に手数料が掛からない額で(時事ネタ)

歩道の手摺りの位置で積雪量がよく分かる。

15時にはもう夕方頃のような顔を見せる太陽。
知床の冬は日の出も日の入りも早いのだ。

そろそろ帰りのバスの時間になるので、外のお土産屋さんでお菓子や網走マグネットなどを購入してバスを待つ。

雪に刺さる鶴見中尉のアクスタは売店で購入したもの。
手に取った鶴見中尉を見た店員のお姉様に「渋いですね」と言われて「ヘヘッ…w」としか返せなかった自分に自己嫌悪しながらバスを待つ。

さて、バスも定刻通り来たので、博物館網走監獄を後にする。

博物館網走監獄は建築物の美しさや当時の刑務所の様子を伝えるだけではなく、北海道の開拓の歴史は囚人たち無しには語れず、文字通り命懸けの労働とたくさんの犠牲者を礎に現在のこの北の大地があることを、当時を知らない後世の者たちに伝えたいという思いをひしひしと感じる、とても良い博物館だった。
網走に行った際は是非に。
特に金カム好きな人は人生で一度行ってみるととても楽しめますぞ。

網走からの移動はまた次の記事に続く。